看護師が知っておきたい冬の病気

季節病(気象病)

私たちの身体には免疫力や抵抗力、
病院に関する感受性が備わっていますが、
それらは、季節や気象の影響を大きく受けます。

 

たとえば、季節の変わり目や梅雨時になると関節が痛み、
腰痛がひどくなったり、
大気が乾燥する冬場になると
インフルエンザ等のウイルス性疾患が蔓延したりします。

 

また、寒い季節には、
心筋梗塞の発生が多くなるなどします。

 

医師の間では、梅雨の合間の晴れた日に、
急性虫垂炎の患者さんが増えることも経験的に知られています。

 

このように、気温や気圧の変化は、
私たちの身体にストレスを与え、発生リスクを高めたり、
憎悪させたりします。

 

そして、このようなものを「気象病」と証し、
「季節病」と呼ぶ等します。

 

気象病は、正式な病名ではありませんが、
外的環境の変化に適応しにくくなっている高齢者などには、
このような気象要因に着目した観察も意味のあることになります。

気象病の研究

気象と病気の関係を研究する学問があります。
その学問は「生気象学」と呼ばれています。

 

生気象学の発祥地はドイツで、
早くから気象の変化を基にした健康気性予報サービスが行われてきました。

 

現在では、日本でもインターネット等で、
健康天気予報が提供されてるのを目にすることが多くなっています。

 

また、脳卒中や心筋梗塞などを中心に、
その発生と気象要素との関係について調査や研究を行った論文も、
国内で多数発表されています。

 

たとえば、全国の労災病院で4万6000例を対象に
脳卒中の発生の季節性について調査した研究があります。

 

この研究では、脳出血は男女とも夏に少なく、
冬に多発していることがわかっています。

 

また、くも膜下出血は女性に多く、夏は少なく秋から冬に多発、
脳梗塞は全体では明確な季節性はみとめられないものの、
ラクナ及びアテローム血栓性梗塞は、
夏と1月に増加する2峰性が見られています。

 

そして、心原性脳梗塞では冬場に多発しています。

 

同じように、久山町研究では、
11月から3月に脳梗塞が多く発生しているんマカで、
平均気温が最も低い2月にやや減少する傾向が見られたという研究結果もあります。

 

これは何を意味するのかというと、
一日の気温の変化が激しいときのほうが、
脳梗塞が発生しやすいということです。

 

広島市医師会では、
心筋梗塞の発生症例と気象条件を解析し、
その結果から、特に気圧と気温の関与が明らかになったとしています。

 

また、広島市医師会では、2003年から平均気温や平均気圧、
天気図型を予測することによって、
3段階の「心筋梗塞予報」を開始し、
現在は対象領域を広島市から広島県全域に拡大し、
「心筋梗塞・脳卒中予報」につなげるなどしています。

気温の変化による影響

気温の変化による身体への影響を見てみます。

 

気温が下がると血圧が上昇

 

気温が下がると血圧が上昇します。

 

なぜ気温が下がると血圧が上昇するのでしょうか。

 

それは、「寒い」と感じること自体がストレスになること、
つまり、慣例刺激によって血管が収縮することによって、
血管抵抗が増え、抹消の血液が中心に集まり、
心臓の拍出力が増大することが考えられます。

 

逆に温度が上がると抹消血管が拡張するので、
血圧は下がります。

 

このとき、人体には血圧を調整する
自動調節機能(オートレギュレーション)が働きます。
そして、血管に柔軟性がある若年層は、
急激に気温が低下しても、
その変化に順応することができます。

 

しかし、動脈硬化が進んだ高齢者では、
血管がなかなか拡張しません。
元の血圧に戻りにくくなり、
高血圧による脳心血管イベントが起こりやすくなります。

 

さらに、気温の変化は自律神経に影響を与えます。

 

気温の変化は自律神経に影響を与える

 

寒さを感じると、私たちの身体は体温を一定に保つため、
体温を上げようとします。

 

交感神経が優位になり、抹消血管を収縮させ、
身体の中心に血液を集めようとします。

 

そして、交感神経が優位になると、
体内ではリンパ球が減り、
副交感神経が優位になると、
体内ではリンパ球が減り、
副交感神経が優位になるとリンパ球は増えます。

 

つまり、平均気温が低い冬場はリンパ球が減少することによって、
ウイルスや細菌への抵抗力が下がり、
感染症にかかりやすくなります。

 

逆に温かくなり、気温が上がる春先は、
副交感神経が優位になりやすくなるため、
体調を崩すことによってうつ病などの疾患が発生しやすくなります。

 

また、気温は、脳動脈瘤の破裂にも大きく影響します。

 

私たちは4℃の水に片手を30秒間つけるだけで、
血圧が50mmHg程度上昇します。

 

冬場の気温の低い時期に、
急に寒冷刺激を加えることが発生のリスクにつながるのは、
このような血圧の変動があるためです。

気圧の変化による影響

台風などによって気圧が低下すると、
身体にかかる圧力が弱まり、身体はわずかに膨張します。

 

このような変化に対し、
体内ではヒスタミンという炎症物質を放出し対応します。

 

この反応によって、たとえば、関節リウマチや関節痛の患者さんは
気圧が下がると痛みを訴えるなどの症状が出ます。

 

動物実験でも、気圧や気温の変化と、
痛みの関係は科学的に検証されています。

 

名古屋大学の佐藤純准教授の研究によると、
@痛みは気圧や温度の変化によって増強する、
A気圧の変化による痛みの増強には交感神経が関与している、
という結論が出ています。

 

気圧が変化することによって内耳がそれを感知し、
交感神経の活動を亢進させます。

 

すると、血管収縮に伴う虚血痛、
筋肉の攣縮痛などの痛みも出ます。

 

さらに、気圧の変化は、自律神経を乱します。

 

特に、季節の変わり目や台風等の気圧の急激な変化は、
身体に重度のストレスを与え、
自律神経のバランスを崩してしまいます。

湿度の変化による影響

冬場は、大気が乾燥し、
インフルエンザや胃腸炎などの感染症が流行します。

 

乾燥する季節にインフルエンザなどの感染症が流行するのは、
空気中の水蒸気が減ることによって、
細菌やウイルスなどが飛散しやすくなること、
細菌やウイルスが飛散しやすくなること、
ウイルスの生存率が上がること、
咽頭粘膜の繊毛運動が低下することが原因だと考えられています。

 

さらに、気温が低くなると体力も落ちますから、
感染性胃腸炎なども発症しやすくなります。

 

特に高齢者は、免疫力や抵抗力が弱くなるので、
感染を起こしやすくなります。

 

私たちヒトにとって適度な湿度は50〜60%だといわれています。

 

70%を超えると、不快を感じるようになり、
それがストレスになって血圧が上がることもあります。

冬場に増えやすい疾患・憎悪しやすい症状

気象の変化によって発症・憎悪しやすいと考えられる疾患・症状

 

・心筋梗塞
・脳卒中
・肺炎
・気管支喘息
・結核
・インフルエンザ
・関節リウマチ
・神経痛
・偏頭痛
・精神疾患

 

循環器疾患・呼吸器疾患・炎症性疾患・感染症の発症・憎悪に注意

 

・心筋梗塞

 

心筋梗塞は、冬に多く見られる疾患です。

 

気圧が低く、気温も低いときは、
最も心筋梗塞の発症率が高いといわれます。

 

なぜなら、交感神経の緊張状態によって血圧が上昇し、
冠動脈の攣縮が起こりやすい上に、
夜間の脱水も加わり、
血液が凝固しやすい状態になっているからです。

 

・脳卒中

 

脳卒中のうち、脳出血は気温が低い日、
気温格差の激しい日に起こりやすくなります。

 

脳出血の多くは高血圧が原因ですから、
血圧が上昇しやすい条件下では要注意です。

 

中でもくも膜下出血は、気温が低い日で、
前日との気温変化が10hPa以上の日に注意とされています。

 

冷水を使いながら力仕事をしていたり、
寒い日にトイレでいきんだり、
急に咳き込んだとときなど、
血圧が急激に上昇するような状況も、
動脈瘤の破裂が起こりやすいといわれています。

 

・脳梗塞

 

脳梗塞は冬だけでなく、
猛暑日に脱水をきたすことによっても起こります。

 

脱水によって血液がどろどろになり、発症してしまうというものです。

 

脳血栓も脱水が起こるような夏場の猛暑、
そして、冬場だけでなく、
日内の温度差が10℃以上の気温の変化が大きい季節にも
起こりやすくなります。

 

気温差が大きい季節には、血液粘稠度画像化し、
正常血圧の人が詰まりやすくなるという報告もありますから
注意しなければなりません。

 

・気管支喘息

 

気管支喘息は、冬場と季節の変わり目に憎悪しやすい疾患です。

 

非アトピー性では、急に温度が下がる等の寒冷刺激で、
アトピー性では移動性高気圧が空気を拡販し、
アレルゲンを飛散させることによって、
発作が起こります。

 

・肺炎

 

肺炎は、冬場に多く見られる疾患のひとつで、
気温の低下で免疫力が下がること、
基礎代謝を上げるために体力を消耗することなどが
原因になっています。

 

ですから、体力がない高齢者や小児は、
気象の影響を受けやすいため、
肺炎にかかりやすいといえます。

 

・その他

 

インフルエンザ矢の炉ウイルス等の感染性胃腸炎、
関節リウマチ、関節痛等の痛みも、
冬場に発症・憎悪しやすい疾患であるといえます。