看護師が知っておきたい冬の病気

冬に多発する疾患・狭心症

狭心症のケアの流れ

 

救急外来受診
  ↓
捕助診断(血液検査・心電図検査)
  ↓
ルート確保
  ↓
病棟入院
  ↓
聴取・確認(症状出現時の状況の詳細、痛みの性状、持続時間、既往歴、
     治療歴、患者さんや家族の同意)
  ↓
ニトログリセリン投与
  ↓
検査準備(胸部X線写真、胸部CT検査、心エコー、冠動脈造影検査、心臓核医学検査)
薬物準備
  ↓

検査結果により治療法の決定
 薬物治療(抗狭心症薬<硝酸薬・Ca拮抗薬・β遮断薬、抗血小板薬、抗凝固薬、その他)
 再灌流療法(カテーテル治療、冠動脈デバイス術)
  ↓
全身状態の観察・経過観察(合併症の有無、副作用の有無、血圧、心拍数、
            再狭窄の兆候)
  ↓
運動負荷試験
  ↓
退院指導(冠危険因子のコントロール<生活習慣の是正>、
    食事、運動、服薬の指導)
  ↓
退院

 

 

狭心症の看護のポイント

 

・病態の鑑別に重要な、発作の出現状況を詳しく聴取しましょう。
・心筋梗塞への以降を予防するために、冠危険因子のコントロール、
 服薬に関する患者教育を実施しましょう。

 

狭心症の特徴・症状

 

・動脈硬化性病変であるプラークの形成や冠攣縮によって、
冠動脈が狭窄し、一時的に心筋が虚血した状態です。

 

・胸の圧迫感や締め付けられるような痛みを感じる発作が、
数分〜20分ほど持続します。

 

・虚血性心疾患の既往や家族歴に起因することもあります。

 

・虚血による心筋壊死は起こらないため、
心筋マーカーは上昇しません。

 

・発作時にニトログリセリンを服薬すると、
痛みが消失します。

 

・頸部や下あご、左肩から左腕に掛けての放散痛がみられることがあります。

 

・虚血性心疾患には、労作性狭心症、異型狭心症、
不安定狭心症、心筋梗塞があります。

 

入院時の対応

 

狭心症は、発作が起きたときの状況などの聴取が
とても重要です。

 

患者さんに、発作が出現した状況、誘因、持続時間、
痛みの性状などを聞きましょう。

 

発作が20分以上続いている、
安静にしているときにも、症状が出現する、
発作の頻度が多い、または痛みが増しているというような場合は、
心筋梗塞への移行リスクが高い狭心症であると考えることができます。

 

また、以下にあげる条件にひとつでも該当する場合は、
心筋梗塞への移行リスクが高まるため、
あわせて確認しておくことが必要です。

 

・陳旧性心筋梗塞
・脳血管障害
・抹消血管障害
・糖尿病の既往歴
・経皮的冠動脈形成術(PCI)
・冠動脈バイパス術(CABG)
・アスピリン服用、
・75歳以上

 

どのような検査を実施するのか、
薬物療法の実施に当たって投与する薬剤について医師に確認します。

 

カテーテル検査(冠動脈造影検査)が行われる場合は、
同意書が必要なので、家族へ連絡することも必要です。

 

外来で連絡が取れているかどうかを確認し、
取れていない場合は、連絡を引き継ぎましょう。

 

治療へつなげる準備

 

まず、血液検査と心電図検査の準備を行います。

 

安静臥床の状態で、バイタルサインを確認し、
確定診断のために、胸部X線検査、胸部CT検査、心エコー検査、
冠動脈造影検査、心臓核医学検査(心筋シンチグラフィ、RI検査)
などが実施されることがありますから、
検査に応じた準備を開始しましょう。

 

薬物治療の開始に備え、点滴ルートの確保も重要です。

 

このとき、カテーテル検査の実施を考慮しましょう。

 

心臓カテーテルや、橈骨動脈からアプローチしますが、
右腕に穿刺されることが多いので、
ルートは左腕に確保すると良いでしょう。

 

 

*狭心症以外の主な循環器系胸痛*

 

 ・急性心膜炎 : 鋭い痛みが30分以上続きます。
          数時間から数日間痛みが続くこともあります。

 

 ・大動脈解離 : 引き裂かれるような、焼けるような激痛が
         30分以上続きます。

 

 ・大動脈弁狭窄症 : 労作性狭心症様が数分から数十分続きます。

 

 ・肥大型心筋症 : 不定
          数分から数十分続きます。

 

 ・肺塞栓症 : 激しい胸部全体の圧迫感が突然起こり、
        30分以上続きます。

 

 ・肺高血圧症 : 圧迫感が数分続きます。

 

狭心症の分類

 

狭心症は、発症誘因や発症のメカニズムなどから、
「労作性狭心症」、「異型狭心症」、「不安定狭心症」
の三つに分類され、この順序で緊急度が高くなります。

 

いずれの場合も胸痛はニトログリセリンの服用によって消失します。

 

・労作性狭心症

 

労作性狭心症は、冠動脈が狭窄しているため、
激しい運動をしたときに
必要量の酸素を供給できないことによって起こります。

 

胸痛などの発作は、3〜5分ほど続きます。

 

・異型狭心症

 

異型狭心症は、夜間から早朝の安静時に発作が起こります。

 

冠攣縮が起こり、血流が障害されます。

 

痛みは数分〜15分程度持続します。

 

・不安定狭心症

 

不安定狭心症は、労作性狭心症が憎悪したものです。

 

3週間以内に初発、或いは徐々に発作頻度が増していたり、
持続時間が憎悪しているという状態です。

 

労作時だけでなく、安静時にも発作が出現します。

 

痛みは数分〜20分ほど持続します。

 

不安定狭心症は、心筋梗塞に移行するリスクが最も高く、
突然死も起こる可能性のある重症な状態です。

 

狭心症の治療と介助

 

狭心症は、ニトログリセリン投与によっても
痛みが消失しない場合に入院措置がとられます。

 

治療の目的は、自覚症状の改善と心筋梗塞への移行の防止です。

 

狭心症の治療には、薬物療法、冠動脈形成術、
冠動脈バイパス術などがあります。

 

ニトログリセリンの舌下投与やスプレー噴霧、
静脈内投与で虚血状態を改善し、
心筋梗塞へのリスク評価を行います。

 

心筋梗塞への移行リスクが低いと判断された場合には、
早期保存的治療として抗狭心症薬を中心とした
薬物療法が行われます。

 

逆に心筋梗塞への移行リスクが高い場合は、冠動脈造影を行い、
PCI或いはCABGなどの侵襲的治療の適応かどうかを診断します。

 

この場合は、カテーテル検査室に連絡を取り、
検査出しの準備が必要です。

 

検査への移動には、患者さんの心負荷をかけないように
車いすを使用します。

 

治療後は、療養生活における注意事項、生活指導などを行います。

 

労作性狭心症や異型狭心症では、
運動負荷試験を行い、どの程度の労作が可能かを評価します。

 

運動負荷試験では、強い胸痛や不整脈の出現に備え、
対処できる準備をしておくことが大切です。

 

また、循環動態が維持されているかどうかを、
全身状態の観察によって評価します。

 

血圧や心拍数などのバイタルサインに加え、
チアノーゼや浮腫などの有無を観察します。

 

運動負荷試験

 

運動負荷試験とは、負荷をかけて運動をしたときの
心電図の変化を調べるテストです。

 

どの程度の運動で虚血状態が起こるかを測定します。

 

検査方法は、階段を一定時間昇降するマスター階段試験、
動くベルトの上を歩行するトレッドミル、
自転車ペダルをこぐエルゴメーター等があります。

 

トレッドミルとエルゴメーターは
あわせて血圧の変化も測定します。

 

トレッドミルについては労作性狭心症が対象の
運動負荷試験です。
不安定狭窄症、および重症大動脈勉強索症、
重症の不整脈では禁忌の検査です。

 

また、3文ごとに負荷を増していき、
胸痛など狭窄症の症状が出現するまで運動を続ける試験のため、
必ず医師の立会いの下で実施します。

 

運動負荷を行うことができない場合は、
薬物負荷によるテストを実施することもあります。

 

主な狭心症の治療薬

 

硝酸薬: 血管拡張作用(ニトログリセリン、硝酸イソソルビドなど)

 

Ca拮抗薬: 血管拡張作用(ジルチアゼム、ベラパミル、アムロジピペシル、
     エホニジピン、シルニジピンなど)

 

β遮断薬: 労作時の血圧上昇、心拍数の増加を抑制
     (アルプレノロール、ブフェトロールなど)

 

抗血小板薬: 心筋梗塞発症の予防
      (アスピリン、チクロビジン、シロスタゾールなど)

 

抗凝固薬: 血栓形成の防止(ワルファリン、ペハリンなど)

 

そのほか、スタチン系高脂血症薬、ACE阻害薬、ARB、降圧薬、抗血栓薬などが用いられます。

 

投与する薬剤によっては、悪心・嘔吐等の副作用が出ることもあります。
そのような症状が現れていないかを観察することも大切です。

 

合併症や異常所見を見逃さないことが大切

 

急変を見逃すことがないように看護していくことが必要です。

 

心臓の収縮力が低下すると、心原性ショックを起こすことがあります。

 

チアノーゼや冷汗、嘔吐、血圧低下など、
循環動態が阻害されて生じる身体症状が見られる場合は、
心原性ショックを念頭に置いたアセスメントをすることが重要です。

 

また、合併症や異常所見を見逃さないようにするために、
検査も行います。

 

・心電図モニタ

 

不整脈や心不全などの合併症の早期発見には、
心電図モニタでの波形の変化に注意をすることが必要です。

 

特に、T波の平坦化やST低下などの変化には
注目をすることが必要で、
これらは心筋虚血が起きた部位に現れます。

 

正確な波形を得るためには、電極が正しく装置され
体動によって外れていないか、確認をすることも大切です。

 

・血液検査

 

血液検査では、CK(クレアチニンキナーゼ)(CK-MB)、トロポニンT、
白血球数、CRPがあります。

 

狭心症では、心筋マーカーのCK(CK-MB)値に異常は見られません。
ですが、心筋梗塞への移行リスクが高い患者さんの場合では、
あわせて確認しておく必要があります。

 

また、動脈硬化に関係のある脂質異常症を示す検査値である
(T-Cho、HDL、TC、TGなど)や、糖尿病、腎臓病の指標となる
検査値についてもみていくようにしましょう。

 

・血圧

 

高い血圧は心臓に負担を掛けますから、
血圧の管理をしていくことも大切です。

 

安静時だけでなく、身体を動かした後にも血圧を測定し、
少し低めに血圧をコントロールします。

 

看護ケアのポイント

 

狭心症は、再狭窄・再閉塞を繰り返す疾患です。

 

心筋梗塞に比べ、病棟内は歩行可能と安静度はあまり高くありません。
ですから、看護ケアは、再発を予防するための生活環境・
生活指導が中心になります。

 

虚血性心疾患の原因となる動脈硬化を引き起こさないように、
食生活や運動習慣、喫煙をはじめとする生活習慣を見直し、
少しでも再発のリスクを小さくすることが大切です。

 

また、薬物治療の継続の必要性を説明し、
服薬コンブライアンスを上げることを目的に指導します。

 

また、血圧の変動は心臓への負担を大きくします。

 

入浴時の脱衣所や浴室、トイレなどの
気温差の大きい場所は、あらかじめ温めておくなど、
気温差を小さくする工夫をします。

 

どのような場面で発作を起こしやすいのかを
患者さんに説明し、自分で対策を講じることができるように
指導することが必要です。

 

冠動脈の動脈硬化を進行させる因子(冠危険因子)とは

 

・脂質異常症
・高尿酸血症
・運動不足
・高血圧
・喫煙
・精神的ストレス
・糖尿病
・肥満
・年齢
・性別
など