看護師が知っておきたい冬の病気

冬に多発する疾患・心筋梗塞

ケアの流れ

 

救急外来受診
  ↓
血液検査・心電図検査・ルート確保
  ↓
病棟入院
  ↓
聴取・確認(症状の程度・持続時間、
     既往症、生活習慣、患者さん・家族の同意)
  ↓
検査準備(標準12誘導心電図、冠動脈造影検査、心エコー検査、
    心臓核医学検査)
薬剤準備
  ↓
治療法の決定
 ・再灌流療法(血栓吸引法、血栓溶解療法、
       カテーテル治療(PCIなど)、冠動脈デバイス術)

 

 ・薬物療法(抗狭心症薬、抗血小板薬、抗凝固薬など)
  ↓ 
全身状態の観察/経過観察(合併症・副作用の有無、再梗塞の徴候、
            安静の保持)
  ↓
心臓リハビリテーション
 ・発作症状の有無を観察(胸痛、悪心、チアノーゼなど)
  ↓
退院指導(生活指導、服薬指導)
  ↓
退院

 

 

 

心筋梗塞のケアでは、
血液検査や心電図検査、冠動脈造影検査などによって
早期の鑑別診断が必要で、
致死的不整脈への対策、再灌流療法による梗塞の拡大を
防止することが大切です。

 

また、治療後は安静を保ち、
段階的に心臓リハビリテーションを開始します。
そして、再梗塞の予防をします。

 

 

心筋梗塞の特徴

 

・心筋梗塞は、冠動脈の閉塞による虚血性疾患のひとつです。

 

・一定時間、心臓への血流が途絶えることで、
心筋細胞が壊死した状態です。

 

・発症した人のおよそ半数が、発症する数週間前に、
狭心症による胸痛発作などの前駆症状を起こしています。

 

・30分異常持続する紋扼感(こうやくかん:しめつけられる感じ)や
圧迫感を伴う激しい胸痛、冷汗、悪心・嘔吐、
呼吸困難などの症状が見られます。

 

・心不全、ショック、重症不整脈、心破裂など、
致死率の高い合併症が起きることがあります。

 

・心音は多くの場合、I・U音が減弱するため、
聴診では、V・W音が聴取されます。

 

・心電図では、STの上昇とT波の増高がみられます。

 

入院時の対応

 

入院が決まったら、
まず患者さんの家族と連絡が取れているかどうかを確認します。

 

心筋梗塞の場合は、死亡してしまうケースも少なくありません。
ですから、可能な限り来院を促します。

 

すぐに来院できない場合でも、入院時に一度は電話で話をするように
アプローチします。

 

また、ほとんどの患者さんは自覚症状があって受診しています。
はじめに自覚症状を覚えたときと比べて、
今の状態がどのように変化しているかを聴き取りましょう。

 

そして、なるべく具体的な事実を把握するため、
症状の程度や性状、持続時間などを聞いていきます。

 

ただし、痛みの症状は、人によって感じ方や表現方法がさまざまです。

 

ですから、たとえば、最初の痛みを10とした場合、
現在の痛みはどの程度かなどと質問をするようにすると、
症状の変化がわかりやすくなります。

 

フィジカルアセスメントでは、心音でのV・W音の聴取が特徴的です。
心音にあわせ、顔色や呼吸状態等も確認しておくようにしましょう。

 

心筋梗塞の治療の準備

 

外来の時点で、採血や心電図をとっているはずですが、
経時的に見ていく必要があるデータもあります。

 

採血の必要性と、採血を行う時間の間隔は、
医師に確認しておくようにします。

 

・心電図

 

心電図は、標準12誘導心電図を準備します。

 

典型的な心電図波形では、
ST上昇やT波の増高がみられます。

 

 *標準12誘導心電図*

 

  標準12誘導心電図は、四肢と胸部に電極を装着し、
 3つの双極誘導(T、U、V誘導)と3つの単極肢誘導(aV R、
 aV L、aV F)、6つの胸部誘導(V1〜V6)の合計12の心電図を
 記録したものが、標準12誘導心電図です。

 

  多角的に心臓を観察することができるので、電気活動に支障を
 きたしている部位(虚血部位)を特定することができます。

 

  標準12誘導心電図は、 虚血性心疾患、
 不整脈の診断や治療効果の判定等を目的に実施されます。

 

  電極の装着を正確に行うことが、実施のポイントです。

 

  仰臥位の患者さんの両手首、両足の内側、胸部の6箇所に
 電極をつけます。

 

  胸部誘導の電極位置は以下のとおりです。

 

  V1 : 第4肋間胸骨右縁
  V2 : 第4肋間胸骨左縁
  V3 : V2とV4を結んだ線の中間点
  V4 : 左鎖骨中線と第5肋間の交わる点
  V5 : V4の高さの水平線と前腋窩線との交わる点
  V6 : V4の高さの水平線と中腋窩線との交わる点

 

 

・同意書

 

心筋梗塞の場合は、ほとんどのケースでカテーテルによる
冠動脈造影検査が行われます。

 

本人や家族の同意書が必要です。

 

患者さん本人の意識が清明であれば、
本人の同意を得ますが、
それ以外では家族の同意を求めなければなりません。

 

その旨、家族に連絡をとる際に伝えるようにします。

 

・その他

 

心エコー検査、心臓核医学検査などが実施されることがあります。
その際には、それぞれの検査に応じた準備を開始します。

 

・点滴ルートの確保

 

薬物治療時に必要な点滴ルートの確保は、
カテーテルを入れることを念頭に置き行います。

 

カテーテルは右手の橈骨動脈からアプローチすることが多いです。
ですから、点滴ルートの確保は、左手の血管を選択します。

 

治療と介助

 

診察と同時に、酸素投与、薬物投与などの初期治療が行われます。

 

その後、冠動脈造影検査で冠動脈の状態を評価し、
診断がついたら、そのまま再灌流療法を開始します。

 

カテーテル治療を行った際は、
動脈に穿刺しているので、治療後に止血介助を行います。

 

翌朝には、止血テープを外しますが、
止血されていることをしっかり確認します。

 

冠動脈が閉塞している場合に行う再灌流療法は、
血栓を除去する血栓吸引療法、薬剤で溶解する血栓溶解療法、
経皮的冠動脈形成術(PCI)などにより
血流を再開させます。

 

また、冠動脈形成術には、バルーンを膨らませて血管を拡張するPOBAと、
ステントを留置して拡張するBMS等があります。

 

いずれも血流の再開を確認することができれば、
治療は終了します。

 

閉塞が高度であったり、PCIなどが適応外であったりした場合には、
冠動脈バイパス術(CABG)が行われます。

 

治療が終わったら、心臓リハビリテーションを開始し、
社会復帰を目指します。

 

心筋梗塞の患者さんの看護のポイント

 

初期治療では、薬剤投与が中心です。

 

治療であっても、なるべく心臓に負担を掛けないように、
まずは指示通りの投薬であるかをしっかり確認することが大切です。

 

血管拡張薬、抗凝固薬など薬剤によっては、
悪心、嘔吐などの副作用が出現することがあります。

 

心筋梗塞では、安静保持が第一なので、
嘔気によって上体を起こしたり、横向きになることを
避けることが必要です。

 

副作用の症状が出ていないかどうかを
こまめに観察しましょう。

 

経静脈的投与による血栓溶解治療の場合では、
再梗塞のリスクがあります。

 

ですから、投薬中は、循環が維持されているかも
しっかり観察する必要があります。

 

再梗塞した場合は、心電図に変化が現れますから、
モニタの観察は継続していくことが必要です。

 

また、自覚症状も出現するので、
症状の変化を追うことも大切です。

 

心電図モニタや自覚症状などで、
再梗塞を示す徴候が見られた場合は、
バイタルサイン(降圧薬、昇圧薬による血圧の変動)、
意識障害の有無とあわせて、再梗塞と考える根拠を
明らかにしておくことが必要です。

 

こうすることで、もし、心電図波形を読むことができなくても、
他のスタッフに意見を求めることができます。

 

体動によって心電図波形に変化が生じることもあります。

 

電極が正しい位置に装置されているかどうかも
確認しておくことが必要です。

 

合併症・異常所見を見逃さない

 

心筋梗塞の治療後も、
合併症や異常所見を見逃さないようにすることが大切です。

 

・心電図

 

心電図は、経時的なモニタリングを行い、
波形の異常をチェックすることが必要です。

 

心室細動や心室頻拍などの致死的不整脈、
緊急対応が必要な房室ブロックの出現には、
特に注意をすることが必要です。

 

・血液検査

 

血液検査のデータで注目すべきは、
心筋マーカーのCK(CK-MB)、トロポニンT値です。

 

中でもCK-MBとトロポニンTは、
心筋に特異的なもので、心筋が壊死したとき、
血液中に増加するものです。

 

また、ASTやLDも心筋に関連する逸脱酵素で、
これらの値も心筋細胞が障害を受けると異常値を示します。

 

・痛み

 

心筋梗塞の特徴的な症状のひとつである胸痛は、
心臓に負荷がかかっている状態を示しています。

 

特に、胸骨下と前胸部の痛みの出現に注意することが必要です。

 

更に、悪心・嘔吐、チアノーゼ、四肢冷汗、浮腫といって
身体症状の有無も観察することが大切です。

 

 

心筋梗塞の発作は突然起こります。

 

胸痛などの再梗塞の症状や心電図モニタを
注意深く観察することが大切です。

 

また、安静期間は深部静脈血栓が形成されることがあるため、
血栓予防薬と弾性ストッキングなどで予防します。

 

血栓が形成されると、ちょっとした動作で血栓が飛び、
肺血栓塞栓症、脳梗塞につながります。

 

特に、糖尿病や脂質異常症などの患者さんは
血栓が形成されやすいため、
注意して観察していくことが必要です。

 

*心筋マーカーの上昇と経過*

 

CK : 4〜8時間で上昇 24時間後にピーク 3〜4日で正常化

 

CK-MB : 4〜8時間で上昇 112〜24時間後にピーク 3日で正常化

 

トロポニンT : 3〜6時間で上昇 12〜18時間でピーク 約2週間検出可能

 

心筋梗塞の看護ケアのポイント

 

心筋梗塞の患者さんに対しては、
安静度に応じたケアを行い、
心臓に負荷をかけないようにすることが最も大切なことです。

 

身体を動かす前後には、
そのときの安静度に応じた体位で血圧を測り、
血圧の変化を確認することが必要です。

 

また、体位交換を行う場合も、患者さんに負荷をかけないように
看護師二人で実施します。

 

側臥位にするときには、枕等を当てて
寄りかかれる体勢をとるようにします。

 

また、口腔ケアにも注意が必要です。

 

特に治療後、血流が再開すると症状が消失するので、
患者さんにとっては安静を維持することが難しくなります。

 

しかし、安静を保つ必要性を説明し、
理解、協力を求めるようにします。

 

治療後1〜2日目からは、
心臓リハビリテーションが開始されます。

 

PTやOTと連携し、患者さんの状況に応じた運動を
ベッドサイドでも行います。

 

 *心臓リハビリテーションとは

 

  心臓リハビリテーションは、心血管疾患の患者さんを対象に、
 再発予防及びQOL改善を目的として行われます。

 

  主体は運動療法で、運動強度は患者さんによってさまざまです。

 

  CK値の上昇は止まっている、
  心不全がコントロールされている、
  致死的不整脈がコントロールされているなどの
  条件が確認できたところで、
  心臓リハビリテーションを開始します。

 

  医師の指示のもとで、まず床上での身体挙上から座位、
  立位、歩行と、段階的に運動強度・範囲をあげていきます。

 

  リハビリテーションを進めるときには、
  血圧低下と不整脈の出現に注意をすることが必要です。

 

訓練中に、胸痛や不快感、チアノーゼなど発作様の症状が見られたら
すぐに中止をし、安静臥床にして様子をみるようにします。
そして、異常所見はすぐに医師に報告しましょう。

 

循環が維持されていない状態では、
尿が出ず水分が体に貯留してしまいます。

 

この水の貯留は、心不全をきたす誘因になるため、
毎時尿量を確認するなど、IN/OUTをみながら
水分管理を行うことも必要です。