看護師が知っておきたい冬の病気

冬に多発する疾患・脳梗塞

脳梗塞のケアの流れ

 

救急外来受診
  ↓
ルート確保・臨床検査(血液検査、胸部X線、心電図)
  ↓
入院
  ↓
検査準備・聴取・確認
(病歴・家族歴、NIHSS項目、臨床検査データ、患者さん・家族の同意)
  ↓
CTまたはMRI検査(脳血管評価)−NIHSS評価
  ↓
治療法の決定
  ↓
薬剤準備
  ↓
rt-PA静注療法

  ↓
薬剤投与・管理(〜24時間)
  ↓
頭部CT
  ↓
異常ありの場合(降圧療法・抗脳浮腫療法・呼吸管理・抗潰瘍薬投与・
       外科的処置・ドレナージ)
  ↓
全身状態の観察(合併症の確認・後遺症の評価)と早期リハビリの開始
  ↓
リハビリ(ADLの拡大)
  ↓
退院

 

 

脳梗塞の患者さんには、
NIHSS項目・病歴・家族歴などの確実な聴取と確認を行い、
早急にrt-PA静注療法の実施をすることがとても大切です。

 

また、合併症や後遺症を予防・軽減し
ADL拡大につなげるための、
安静度に応じたリハビリテーションを行うことも需要です。

 

脳梗塞の特徴

 

・脳梗塞は、何らかの原因によって脳の血管が狭窄・閉塞し、
虚血が起こり、その血管が支配する領域の脳組織が壊死した状態です。

 

・脳梗塞の主な原因は、高血圧、動脈硬化、血栓などです。

 

・脳梗塞は、心疾患や糖尿病を持つ人に高リスクな病気です。

 

・病態によって、アテローム血栓性脳梗塞(粥腫による血栓の閉塞)、
心原性脳塞栓症(心臓内血栓遊離による閉塞)、
ラクナ梗塞(血管壁の変性による閉塞)に分類されます。

 

・脳梗塞になると、片麻痺、感覚障害、構音障害、失語・失認、
意識障害などの症状がみられます。

 

・壊死した部分によって障害が異なり、
おおよそ3分の2の人に後遺症が残り、ADLが低下します。

 

・脳梗塞の代表的な後遺症には、
片麻痺、失語、先行、半側空間無視などがあります。

 

脳梗塞の患者さんの入院時の対応

 

脳梗塞の患者さんが救急外来に運ばれてきたら、
まずrt-PA静注療法(血栓溶解療法)の
適応であるかどうかの判断が重要です。

 

rt-PA静注療法(血栓溶解療法)の
適応であるかどうかの判断は、
発症時の様子を確認することが大切です。

 

「いつから」、「何をしていて」、「どうなったのか」
などを確認します。

 

この場合、発症後4.5時間を超えているなど、
適応外(禁忌)になる因子を知っておく必要があります。

 

本人に意識がない場合は、家族に聴取します。

 

また、家族歴や既往歴についても聞いておきます。

 

また、血液検査、胸部X腺、心電図の検査データも準備し、
確認します。

 

さらに、NIHSS(National Institutes of Health stroke scale)
による重症度判定を行うため、
各項目について聴取し、評価を行います。

 

このスケールによる判定は、
療養実施中も決められた時間に行い、
その結果は治療における重要な指標になります。

 

医師に聴取の内容を伝え、rt-PA静注療法の適応かどうかを確認します。

 

rt-PA静注療法は、合併症として頭蓋内出血のリスクを伴う治療です。

 

ですから、適応になった場合は、本人または家族の同意が必要です。

 

治療法の説明は医師が行いますが、
本人や家族が十分に理解しているかを確認し、
必要があれば補足説明をします。

 

rt-PA静注療法のチェックリスト

 

以下にあげるrt-PA静注療法のチェックリストのうち、
1項目でも該当する場合は適応外(禁忌)となるため、
rt-PA静注療法を行うことはできません。

 

・発症〜治療開始時刻4.5時間超

 

・既往歴

 

 非外傷性頭蓋内出血
 一ヶ月以内の脳梗塞(一過性脳虚血発作を含まない)
 三ヶ月以内の重篤な頭蓋脊髄の外傷或いは手術
 21日以内の消化管或いは尿路出血
 14日以内の大手術或いは頭部以外の重篤な外傷
 治療薬の過敏症

 

・臨床所見

 

 くも膜下出血(疑)
 急性大動脈解離の合併
 出血の合併(頭蓋内、消化管、尿路、後腹膜、喀血)
 収縮期血圧(降圧療法後も)185mmHg以上
 拡張期血圧(降圧療法後も)110mmHg以上
 重篤な肝障害
 急性膵炎

 

・血液所見

 

 血糖異常(<50mg/dlまたは>400mg/dl)
 血小板100000/mm3以下

 

・血液所見:抗凝固療養中ないし凝固異常症において

 

 PT-INR>1.7
 aPTTの延長(前値の1.5倍<めやすとして約40秒>を超える)

 

・CT/MR所見

 

 広汎な早期虚血性変化
 圧排所見(正中構造偏位)

 

NIHSSのチェック項目

 

・意識水準
・麻痺:下肢
・質問
・運動失調
・命令
・感覚
・注視
・言語
・視野
・構音障害
・麻痺:顔
・消去現象と無視
・麻痺:上肢

 

脳梗塞の治療と介護

 

rt-PA静注療法が適応となると、アルゴリズムに沿って
直ちに治療が実施されます。

 

アルテプラーゼ(rt-PA)は。0.6mg/kgと定められていて、
体重によって投与量が決まります。

 

まず、10%を1〜2分かけて急速投与し、
残りを1時間掛けて持続静注します。

 

適応外であると、脳保護療法、抗血小板療法、
抗凝固療法、抗脳浮腫療法が行われます。

 

また、ほとんどのケースで、
降圧薬により血圧のコントロールが行われます。

 

看護師は、治療方法が決まったら、
すぐに投与薬剤の準備を始めます。

 

*各療法の主な使用薬剤*

 

 脳保護療法: エダラボン
 抗血小板療法: オザグレルナトリウム、アスピリン
 抗凝固療法: ヘパリンナトリウム、アルガトロパン
 抗脳浮腫療法: 高張グリセロール(10%)

 

治療の準備

 

rt−PA静注療法は、脳内で出血がある場合は禁忌になります。

 

画像診断で確認をする必要がありますが、
発症直後(24時間以内)の場合は、
CT画像では確認することができないため、
MRI検査を行います。

 

MRI検査の場合は、造影剤使用の同意書が必要です。
検査室への連絡などの準備を行う際は、
同意書を準備し、患者さん本人、もしくは家族の同意を得ます。

 

rt-PA静注療法が適応外になった場合は、
脳保護療法、抗血小板療法、抗凝固療法、抗脳浮腫療法など
薬物治療が行われます。

 

医師に内容を確認し、薬剤を準備しましょう。

 

気道閉塞が認められる場合は、気道確保をし、
酸素を投与します。

 

モニタを装着し、治療が開始されるまでの間、
患者さんの容態に変化がないかどうか全身状態を観察し、
急変に対応できるよう準備します。

 

頭痛や嘔吐などの症状が激しく、
安静を保つことができない場合は、
検査や治療に影響が出るため、
制吐薬や鎮痛薬の投与の確認を医師にします。

 

rt-PA静注療法の作用

 

脳梗塞の病巣周辺には、機能障害はあっても
回復可能な脳細胞領域があります。

 

ですが、その領域も数時間後には壊死してしまいます。

 

壊死する前に薬剤を投与して血栓を溶解し、
血流を再開させて壊死を防ぎ、
症状の改善を図ることを目的とした治療が
血栓溶解療法です。

 

血中にあるプラズミノゲンが、rt-PA剤で活性化され
プラズミンとなり、
血栓を溶解し、脳血流が再開します。

 

rt-PA静注療法の観察

 

rt-PA静注療法を行う際は、
投与開始後15分経過したらNIHSSで症状を観察し、
その後も1時間以内は15分ごとにチェックを続けることが必要です。

 

投与修了後も、1〜7時間は30分ごとに、
それ以降は24時間経過までは1時間ごとにチェックを行います。

 

血圧の測定も、投与開始後2時間までは15分ごと、
2〜8時間は30分ごと、
それ以降24時間までは1時間ごとに実施します。

 

万が一、NIHSSで悪化が確認されたり、
頭痛や悪心・嘔吐、急激な血圧の上昇・低下が見られた場合は、
緊急でCT検査を行い、頭蓋内出血の有無の確認が必要です。

 

同じように、他の薬剤投与の場合も、
悪心・嘔吐等の副作用が起こる可能性があります。

 

全身症状を観察し、副作用の有無の観察を行っていくことが大切です。

 

脳梗塞の合併症の早期発見

 

脳梗塞の合併症は、CTやMRI画像から病変部位を把握し、
出現する症状や状況について予測し、対応していきます。

 

脳梗塞の患者さんは、意識障害を伴っていることも多いので、
意識障害の評価をすることも大切です。

 

特に、入院したときと比べてどのように変化しているのかを
観察していきます。

 

入院したときは清明だった意識が、
悪化することもありますから、
変化を見逃さないように注意深く観察することが大切です。

 

rt-PA静注療法や抗血栓症治療では、
再梗塞よりも頭蓋内出血のリスクが高くなります。

 

抗血小板療法を行っている場合は、
血液データは正常範囲を逸脱するため、
心電図モニタでの心房細動時の心拍数、
血圧低下の有無などの確認が必要です。

 

脳幹が、脳ヘルニアなどで障害を受けると、
呼吸が停止してしまうこともあります。

 

呼吸パターンやサチュレーション、
呼吸回数、呼吸筋の動きなどをしっかり観察し、
呼吸状態を把握します。

 

そして、早期に異常を発見することができるようにします。

 

瞳孔に異常がある場合は、脳圧の亢進を示しています。

 

瞳孔の異常は、脳ヘルニアの特徴的な症状でもあるため、
見過ごすことができません。

 

瞳孔を観察し、異常の早期発見につなげましょう。

 

脳梗塞の看護ケアのポイント

 

関節拘縮や筋力低下、筋肉の萎縮などの廃用症候群、
褥瘡、深部静脈血栓など、
安静仰臥による二次的障害を予防する必要があります。

 

ですから、急性期であっても、合併症や後遺症予防のために、
脳梗塞は早期からリハビリを開始します。

 

リハビリの具体的な内容としては、
体位交換、関節可動域訓練、良肢位保持があります。

 

安静度が一部解除になり、
頭部を動かすことができるようになったら、
座位訓練へと移行します。

 

脳梗塞の合併症には、誤嚥性肺炎も多くみられます。

 

ですから、嚥下評価・訓練等も行い、
口腔ケアもリハビリにつなげます。

 

後遺症が見られるようであれば、患者さんの残存機能を考慮し、
ケアを行います。

 

視野がかけるときは、顔が見える位置から話しかける、
右口角が下垂していたら、左側で咀嚼する指導をするなど
気をつけながらケアをします。

 

状態が安定し、車いすに乗ることができるようになると、
リハビリ室での訓練を開始することができます。

 

リハビリ室と連携し、患者さんの情報を共有することによって、
病棟内でも運動することが可能となり、
より効果的なリハビリを行うことができるようになります。

 

話のつじつまが合わない、
時間・空間・認識がはっきりしていない、
傾眠傾向であるというような症状があるときは、
意識レベルが低下しており、再梗塞が疑われます。

 

また、異常な呼吸パターンや呼吸回数の減少、
脈拍などにも注意し、ケアしていくことが必要です。

 

意識障害や再梗塞は、呼吸停止につながることがあるため、
心電図モニタ、サチュレーション、バイタルサインなどから
呼吸状態を確認し、医師に連絡することが必要です。