看護師が知っておきたい冬の病気

冬に多発する疾患・脳出血

脳出血のケアの流れ

 

救急外来受診
  ↓
ルート確保・臨床検査(血液検査)・CT検査
  ↓
入院
  ↓
聴取・確認(病歴、家族歴)、意識状態(JCS・GSC)、
     臨床検査データ、臨床症状)
  ↓
検査準備
  ↓
MRI検査(必要時)
  ↓
治療法決定(外科的療法:開頭血腫除去術・脳室ドレナージ)
     (内科的療法:降圧療法・抗脳浮腫療法)
  ↓

全身状態の観察
  ↓
早期リハビリ
  ↓
リハビリによるADLの拡大
  ↓
退院

 

 

脳出血のケアでは、再出血による血圧上昇を予防し、
常に血圧コントロールに注意することが必要です。

 

また、合併症や後遺症を予防したり軽減することができる、
ADL拡張につなげることができる
安静に応じたリハビリテーションを早寝に開始することが必要です。

 

 

脳出血の特徴

 

・脳出血は、脳血管からの出血によって
血腫が形成された状態です。

 

・脳出血は、長期にわたる高血圧状態でもろくなった血管に、
小さな動脈瘤が形成され、
それが血圧の上昇などによって破裂し、
脳内に出血が起きるものです。

 

・血管から流れ出した血液が形成した血腫で、
周辺の正常な脳細胞が圧迫を受けて壊死します。

 

・血腫臥大きくなると、頭蓋脳圧が亢進し、
脳ヘルニアが起こります。

 

・脳出血の出血部位別では、
主に被殻出血、視床出血、脳幹出血、小脳出血、
皮質下出血があり、部位によって症状が異なります。

 

・頭痛や悪心・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状は共通します。

 

・脳出血の原因の約7割は高血圧によるものです。
他の原因には、脳動静脈奇形、脳腫瘍等があります。

 

脳出血の入院時の対応

 

本人が無理であれば家族から、
患者さんの既往歴や家族歴などを聴取します。

 

止血薬を使うことになりますから、
抗凝固薬を服用しているかどうかは、
とても重要な確認事項です。

 

意識障害があると時は、JCS(ジャパン・コーマ・スケール)や、
GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)などで、
意識レベルを確認します。

 

また、血圧の上昇や脈圧の拡大、除脈などの
頭蓋内圧が亢進したときに現れる
クッシング現象がないかどうかについても確認します。

 

 *クッシング現象とは*

 

  頭蓋内圧が亢進すると血管が圧迫され、
 血液量が急激に減少します。
  すると、脳の血流低下による酸素不足を改善しようと、
 反射性調節機能が働いて頭蓋内に血液を送り込み、
 収縮期血圧が上昇します。
  その一方で、拡張期血圧は下降し、
脈圧が拡大します。
  脈は緩徐な圧脈となり、40〜50回/分の徐脈になります。
  このような状態を、クッシング現象といいます。

 

 

脳出血の治療の準備

 

脳出血の治療法を決める際に必要なCT画像や検査データを準備します。

 

呼吸や循環の状態によっては、酸素投与が必要になりますから、
その準備もしておきます。

 

バイタルサインの確認、全身状態の観察を行い、
激痛や悪心・嘔吐があるときには、
鎮痛薬や制吐薬の使用を医師に提案します。

 

 

治療と介助

 

脳出血発症直後のCT画像では、
病巣が白い陰影(高吸収域)として写ります。

 

このとき、非点綴的な出血が認められた場合は、
新たに検査が必要です。

 

MRI検査で脳腫瘍や脳動脈瘤、脳血管造影で
脳血管奇形の有無を診断します。

 

 脳出血の治療には、内科的治療と外科的治療がありますが、
どちらを選択するからは
出血部位と血腫の大きさによって決まります。

脳出血の内科的治療

脳出血の内科的治療は、意識が清明で、
切迫した頭蓋内圧亢進が認められない場合に選択されます。

 

脳出血の内科的治療では、止血薬、降圧薬として
ジルチアゼム塩酸塩や、ニカルジピン塩酸塩などが投与されるので、
準備をしておきます。

 

投与薬物によって血圧を低めに保ちながら、
安静にするようにケアします。

 

頭蓋内圧亢進がある場合は、ギャッジアップを30℃位に保ち、
安静にします。

 

ジルチアゼム塩酸塩には、心抑制の副作用がおきることがあります。

 

心電図をモニタリングし、徐脈や房室ブロックの出現に
十分な注意を払いながら観察します。

 

また、意識レベル、瞳孔の状態、麻痺の程度を観察します。

 

この様子が、入院時と比べて悪化しているようであれば、
頭蓋内圧が亢進していると推察できます。

 

この場合はすぐに医師に報告します。

 

また、呼吸回数や呼吸パターン等を観察し、
呼吸障害の有無を確認します。

脳出血の外科的治療

脳出血の外科的治療は、内科的治療では効果が期待できない場合、
意識レベルが低下し切迫する頭蓋内圧亢進がある場合に選択します。

 

ですが、血腫量が10ml未満の小出血、深い昏睡状態、
手術できない部位での出血などが起きている場合は、
外科的治療は適応外となるため、内科的治療を行います。

 

外科的治療には、開頭血腫除去術、脳室ドレナージなどがあり、
症状に応じて選択します。

 

手術を行う前には、収縮期血圧160mmHg以下を目標にした血圧を
コントロールしていきます。

 

バイタルサインが安定したところで
脳圧降下薬を投与しますから、
看護師はその準備をします。

高血圧性脳出血の手術適応

被殻出血: 神経学的所見が中等症、血腫量が31ml以上で
     血腫による圧迫所見が高度な場合適応になります。

 

視床出血: 血腫除去術の適応はありません。
     (脳室ドレナージを行うことがあります)

 

脳幹出血: 血腫除去術の適応はありません。
     (脳室ドレナージを行うことがあります)

 

小脳出血: 最大径が3cm以上で、神経学的症候が憎悪、
     または出血が脳幹を圧迫し脳室閉塞による
     水痘症をきたしている場合、適応になります。

 

皮質下出血: 脳表からの深さが1cm以下の場合適応になります。

 

くも膜下出血の特徴

 

くも膜下出血は、脳の表面の脳軟膜と
くも膜との間にある動脈の破綻によって出血が起こり、
脳脊髄液に血液が混入した状態です。

 

くも膜下出血の原因の8割は脳動脈瘤です。

 

ほかの原因としては、脳動脈奇形、もやもや病などがあり、
外傷などによっても起こります。

 

特徴的な症状としては、
「今までに経験したことがないような
激しい頭痛」が挙げられますが、
それほどの強い痛みではないこともあります。

 

ですが、いずれの場合も突然起こります。

 

また、強い悪心・嘔吐も良くみられる症状です。

 

このような症状から外来を受診し、
くも膜下出血の診断を受ける場合もあります。

 

くも膜下出血では、意識障害で搬送される人も多く、
発症者の50&が死に至る重篤な疾患でもあります。

 

脳出血は、頭部CT検査を行い、確定診断がなされ、
開頭手術(クリッピング術)か血管内治療(コイル塞栓術)の
外科的治療が行われます。

 

再出血は24時間以内に多く発症し、
痛みや血圧上昇等がその徴候です。

 

術直後に痛みが出たら、
創部の痛みがどうかを見極めます。

 

脳血管攣縮は4〜14日の間に起こりやすく、
3週間程度は注意が必要です。

 

いずれも発症すると予後が悪化します。

 

くも膜下出血のケアでは、
治療後もなるべく血圧に刺激を与えないことが重要です。

 

移動をする際には、特に注意が必要です。

 

排泄時のいきみなども悪影響になるので、
それを避けるために、緩下剤による排便コントロール等も行います。

 

脳出血の部位と主な症状

 

被殻出血: 出血部位と反対側に片麻痺、感覚障害が起こります。
      比較的血腫が大きく、意識障害や出血側への共同偏視がみられます。
      優位側(左半球が多い)で出血すると、失語症が見られます。
      非優位側で出血すると、左半側空間無視、病態失認がみられます。

 

視床出血: 出血部位と反対側に感覚障害、麻痺が起こります。
      脳室穿破があり、頭痛や悪心・嘔吐の症状が見られます。
      垂直方向への注視麻痺、眼球の下内方への共同偏視、
     縮瞳、対光反射の消失・低下などが見られます。
      左側視床の出血では、失語症が見られます。

 

脳幹出血: 深い昏睡、著名な呼吸障害、四肢麻痺、除脳硬直、縮瞳が見られます。
      大量の出血が起きると死に至ります。

 

小脳出血: 激しい頭痛、反復性の悪心・嘔吐、強度のめまいが起こります。
      歩行障害などの失調症状が起こります。
      中等度以上の出血が起きると、意識障害、病巣と反対側への共同偏視、
     眼振、体幹失調、病巣側への外店、顔面神経麻痺、呼吸障害などが起こります。
      悪心が数日から数週間と長く起こります。

 

皮質下出血: 出血部位と反対側に感覚障害、片麻痺が起こります。
       失語、視野障害が起こります。

 

 

合併症の早期発見

 

脳出血で、最も注意すべき合併症は、
頭蓋内圧亢進です。

 

特に循環・呼吸中枢がある脳幹が脳ヘルニアによって障害されると、
意識障害や呼吸停止、血圧低下が起こり、
死にいたることもあります。

 

脳ヘルニアの所見は、意識障害、瞳孔拡大、
対抗反射消失、クッシング現象などです。
これらの症状がないかどうかを確認します。

 

バイタルサインが正常であっても、
神経系に異常が出ることもあります。

 

異常所見を早期に発見することができるように
気をつけなければなりません。

 

頭蓋内圧亢進の大きな原因は、
再出血による血圧の上昇です。

 

血圧の変化は十分に注意し、観察することが必要です。

 

血液データでは、炎症反応を示すCRPやWEBに注目し、
チェックし、頭蓋内圧亢進による意識低下から
誤嚥性肺炎を発症していないかどうか、
尿路感染が生じていないかどうかを確認します。

 

また、感染徴候や髄液もれがないかなど、
手術層にも注意して観察することが大切です。

 

意識の低下や血圧の上昇、
クッシング現象などの急変徴候が見られた場合は、
再出血や頭蓋内圧亢進が推測されます。

 

ケアの際に傾眠傾向、呼吸パターンの異常などが見られる場合は、
血圧やその他データを確認し、
その変化を医師に報告することが必要です。

 

脳出血の看護ケア

 

脳出血の看護ケアは、出血部位から予測される症状を
常に心がけながら観察することが大切です。

 

安静臥床が長い脳出血では、
長期の臥床が原因となり、廃用症候群や褥瘡、
感染症になることがあります。

 

ですから、これらの予防をするため、
また後遺症の改善等を目的とし、
早期にリハビリを開始することが必要です。

 

ただし、あくまでも治療が最優先です。

 

自動的に訓練を行うことができるようになるのは、
出血が止まり、血圧がコントロールされてからになります。

 

急性期のリハビリは、床上で体位交換、良肢位の保持、
関節拘縮予防の関節可動域訓練など
他動的運動を行っていきます。

 

この他動的運動を行うときにも、
血圧に大きな変動がないことを確認しながら行うことが必要です。

 

 

脳出血の退院支援計画

 

脳梗塞や脳出血の患者さんの退院支援計画は、
早期に行うことが必要です。

 

脳梗塞や脳出血によって、麻痺などの後遺症が残ると
ADLが低下し、退院後の生活は大きく変わってしまいます。

 

そのため、家族の介護力や住居環境、経済力を考慮し、
社会資源等を上手に活用していくことがとても重要です。

 

ですが、病気が急に発症するため、
介護保険が未申請の人もいますし、
一人暮らしや高齢者世帯である場合も多く、
退院後、スムーズにもとの住まいに戻ることができないケースが
少なくありません。

 

申請から認定までは一ヶ月ほど要しますから、
早い時期からMSWや地域のケアマネジャーなどと連携し、
入院から一週間以内には在宅療養を視野に入れた
退院支援計画を立てることが必要になってきます。