看護師が知っておきたい冬の病気

冬に多発する疾患・肺炎

肺炎のケアの流れ

 

外来受診(市中肺炎)
  ↓
胸部X線・臨床検査(血液検査)
  ↓
入院
  ↓
聴取・確認(既往歴、家族歴、自覚症状、意識症状、臨床状態)
  ↓
検査準備
  ↓
院内肺炎の場合は胸部X線検査
  ↓
薬剤準備
  ↓
治療の開始(抗菌薬投与)
  ↓

抗菌薬の評価(体温・血液データ(WBC,CRP)・X線画像
  ↓
経過観察/看護ケア(服薬指導・排痰の促進・合併症の確認・
         サチュレーションの確認・血圧や血液データの確認・
         脱水の改善など)
  ↓
治療終了(抗菌薬投与の終了)
  ↓
退院(入院中の院内肺炎の場合は基礎疾患の治療開始)

 

 

肺炎では、検体検査準備を円滑に実施し、
早期に抗菌薬の投与を開始することが必要です。

 

また、抗菌薬投与後の的確な評価を行い
適切な時期に投与を終了し、退院させることが大切です。

 

肺炎の特徴

 

・肺炎は、微生物が気道を通って肺胞に入り込み、
増殖することによって、肺に炎症が起きる病気です。

 

・急性の細菌性感染症です。

 

・主な原因菌は、肺炎球菌・インフルエンザ菌・黄色ブドウ球菌・
レジオネラ菌などがあります。

 

・感染環境によって「市中肺炎」と「院内肺炎」に分類されます。

 

 市中肺炎: 生活圏で感染し発症する肺炎です。
       市中肺炎の主な原因菌は、肺炎球菌です。

 

 院内肺炎: 院内肺炎は、入院後48時間以降に新たに発症した肺炎です。
       主な原因菌は、黄色ブドウ球菌と緑膿菌です。

 

・院内肺炎には、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、誤嚥性肺炎、
MRSAなど耐性菌感染肺炎等があります。

 

・肺炎の症状には、咳嗽、喀痰、呼吸困難、胸痛など呼吸器症状、
発熱、頭痛、全身倦怠感、食欲不振、関節痛などの風邪様症状が見られます。

 

入院時の対応

 

呼吸器疾患や循環器疾患等の基礎疾患があると、
その疾患の症状が肺炎によって悪化してしまうこともあります。

 

ですから、患者さんや家族に、既往歴について聴取します。

 

また、呼吸器症状や風邪様症状などについても確認しましょう。

 

重症の肺炎では、チアノーゼや意識レベルの低下などの症状が見られます。

 

このような場合は、人工呼吸器管理が必要になることがあります。

 

通常の検査施行と共に、医師の指示を確認しましょう。

 

市中肺炎の場合は、A-DROPによる重症度分類が行われるため、
治療の場によって患者さんのおおよその状態を予測することができます。

 

A-DROP(市中肺炎の重症度分類)

 

A(Age): 年齢(70歳以上、女性75歳以上)

 

D(Dehydration): 脱水(BUN21mg/dl以上or脱水あり)

 

R(Respiration): 呼吸(SpO2 90%以下 PaO2 60Torr以下)

 

O(Orientarion): 見当識(意識障害あり)

 

P(B.Pressure): 血圧(収縮期の血圧 90mmHg以下)

 

A-DROP(市中肺炎の重症度分類)の該当項目と治療の場

 

0(軽症): 外来
1or2(中等症): 外来or入院
3(重症): 入院
4or5(超重症): 入院(ICU)

 

治療に向けての準備

 

肺炎の原因菌の推定のための迅速診断を行う準備をします。

 

喀痰グラム染色、尿中抗原検査などに備え、
血液、尿、喀痰を採取し、検体を検査室に送ります。

 

喀痰の採取をする際は、唾液や食物残渣が混入しないように、
十分な配慮をすることが必要です。

 

院内肺炎の場合の対応

 

胸部X線検査による診断の準備をします。

 

胸部X線検査によって確定診断が不可能な場合は、
胸部CT検査が行われることを念頭において準備します。

 

また、血液検査と、喀痰グラム染色や尿中抗原検査の迅速診断の準備もします。

 

動脈血ガスが行われる場合には、動脈穿刺の準備を行います。

 

またサチュレーションを観察するために、
パルスオキシメータを装着し、
低酸素に備え、挿管や酸素投与の準備をします。

 

肺炎の際の胸部X線診断

 

胸部X線を撮ると、肺炎を発症しているかどうかは、
比較的容易に診断することができます。

 

空気を多く含んでいる肺は、
正常であれば血管や気管などの構造物を除いて
黒く見えます。

 

もし、その場所に白い影、異常陰影が映し出されていれば、
何らかの異常があると推測でき、
肺炎の場合はそれば顕著です。

 

*大葉性肺炎: 気管支内の空気が透瞭像として見えます。
        肺葉または肺区域全体に炎症が起こります。

 

*気管支肺炎: 気管支の走行に沿って、異常陰影が広がって見えます。

 

*間質性肺炎: 両側の肺門部から外に広がるように異常陰影が映し出されます。

 

X線写真を撮る際は、たとえば座位では横隔膜が広がって肺がつぶれて写り、
臥床では真上からの撮影でなければ左右の肺の大きさが異なって写るなど、
姿勢によって写り方が異なります。

 

ですから、経過を観察するためには、
なるべく同じ条件下で撮影を行うことが大切です。

 

肺炎の治療と介助

 

胸部X線で陰影が認められると肺炎であると診断されます。

 

肺炎の治療は、原因菌に効果のある抗菌薬の投与を行いますが、
診断後4時間以内の開始が求められます。

 

ですから、診断確定直後は最も可能性の高い病原菌を推定し、
治療薬を選択する経験的治療(エンピリック治療)が実施され、
広域抗菌薬が選択されます。

 

その後、原因菌が特定され次第、
適応する薬を投与します。

 

全身状態に対しては、体温調整、去痰薬、
気管支拡張薬の投与などによる排痰、鎮痛薬の投与、
酸素吸入などの対症療法が行われます。

 

重症の肺炎で、低酸素状態にある場合は、
人工呼吸器管理となるため、
挿管などの準備が必要になります。

 

喀痰の貯留がある場合は、肺の炎症が悪化します。
ですから、体位ドレナージなどで排痰を促します。

 

脱水傾向にあると、喀痰は粘稠度が高くなるため
排痰しづらくなるので、
ネブライザーで喀痰をやわらかくして、
排痰しやすくします。

 

肺炎は、炎症の悪化により、呼吸状態が悪くなります。

 

患者さんの呼吸パターン、呼吸数、胸郭の動き、
呼吸困難の有無などを観察し、
バイタルサインや顔色、四肢抹消でのチアノーゼの有無も
チェックすることが大切です。

 

また、喀痰の量や性状についても観察します。

 

基礎疾患のある患者さんや高齢者、低栄養状態にある患者さんは、
抵抗力が低下しています。

 

症状が悪化したり、長期化することもあるため、
全身状態をしっかり観察し、
異変を早期に発見できるようにしましょう。

 

合併症の早期発見

 

肺炎も重篤になると、合併症が起こります。

 

重症化しないように、ケアすることが必要ですが、
年齢や免疫力などにより、重症化してしまうこともありますし、
重症の肺炎患者さんが救急で運ばれてくることもあります。

 

肺炎の合併症として特に注意したいのは、
「敗血症」と「胸膜炎」です。

 

・敗血症

 

敗血症は感染症ですから、肺炎であることは
敗血症を引き起こす高いリスクになります。

 

軽度の血圧低下、四肢の温感、皮膚の乾燥、発熱、
悪寒、頻脈、頻呼吸などが見られた場合は、
敗血症の初期症状であると推測できます。

 

バイタルサインの変化などから、異変を発見したら、
すぐに医師に報告しましょう。

 

・胸膜炎

 

胸膜炎は、胸膜腔が炎症を起こしているものです。

 

発熱や深呼吸、咳嗽時の胸痛、胸水の貯留による呼吸困難、
好中球の増加等の症状が見られます。

 

血液データや聴打診での濁音などを観察しましょう。

 

炎症部位では、雑音が聴取されます。

 

炎症部位の先にある抹消では、
酸素が不足し、音が減弱します。

 

人工呼吸管理のときは、ウィーニング開始時期に起こりやすい
ファイティングに注意をすることが必要です。

 

ファイティングは、自発呼吸と呼吸器のパターンがあわないために
起こるものです。

 

突然、意識レベルが低下した際は、
換気不全が疑われます。

 

呼吸回数やサチュレーションなどから判断し、
医師に報告をします。

 

また、体温の急激な上昇は、敗血症を推測することができます。

 

血圧や心拍等の変化を見ながら、早急に医師に報告することが必要です。

 

肺炎の看護ケア

 

長期臥床は、無気肺や換気障害につながります。
ですから、早期離床を進めながら、症状を管理していくことが重要です。

 

・服薬指導を徹底する

 

抗菌薬は、途中で服用を中止すると、
耐性菌ができてしまう可能性があります。

 

経口薬に切り替わった時点で、
その重要性を患者さんに理解してもらうように説明し、
最後まできちんと服用するように指導します。

 

・脱水の改善

 

発熱のため、脱水傾向に陥りがちです。

 

脱水になると痰の粘稠度を上げないためにも、
こまめな水分摂取を心がけ、
場合によっては補液をすることも検討します。

 

・酸素状態の観察

 

安静時だけでなく、歩行時や排泄時など
体を動かした後で、サチュレーションを確認し、
常に酸素が足りている状態に保つことが必要です。

 

・排痰を促す

 

聴診やX線画像診断から、喀痰の貯留を確認したら、
体位ドレナージや吸引によって排痰を促すようにします。

 

体位ドレナージとは、重力の影響を利用し、
抹消気道から中枢気道へと痰を移動させ、
排痰を促す排痰去のひとつです。

 

 

抗菌薬の評価

 

抗菌薬の評価は、体温、血液データ(WBC、CRP)、
X線画像によって、以下の3回行います。

 

@ 3日後: 初期抗菌薬の有効性(重症の場合は2日後)を評価します。

 

A 7日以内: 抗菌薬の有効性、終了時期の決定を評価します。

 

B 14日以内: 終了時期の決定、薬剤変更の決定を評価します。