看護師が知っておきたい冬の病気

冬に多発する疾患・気管支喘息

気管支喘息のケアの流れ

 

発症(来院)
  ↓
入院
  ↓
聴取・確認(発作出現時の状況、既往歴、家族歴、治療歴、住環境、臨床症状)
  ↓
検査準備
  ↓
緊急度の判別(血液検査、動脈血液ガス分析検査、IgE検査)
  ↓
酸素投与・挿管準備・薬剤準備
  ↓
治療開始(薬物療法)
  ↓
酸素投与または人工呼吸管理
  ↓

呼吸機能検査
  ↓
経過観察/看護ケア
 ・呼吸状態の観察(SpO2、呼吸回数、脈拍、呼吸筋の働き、
 顔面蒼白、チアノーゼの有無)
 ・合併症の確認(呼吸状態、血液データ)
 ・副作用の確認
  ↓
退院指導(発作時の対応)
  ↓
退院

 

 

気管支喘息の患者さんは、まず、臨床症状や血液検査、
動脈血液ガス分析検査等を行い、緊急度を評価することが必要です。
そして、早期治療の開始と呼吸管理の必要性を判断します。

 

また、急性増悪時の対応の指導を行い、
自己管理能力の向上につなげるようにします。

 

 

気管支喘息の特徴

 

・気管支喘息は、慢性の気道炎症や気道過敏症の亢進によって
気道が狭窄・閉塞を起こしている状態です。

 

・気管支喘息の主な症状は、咳、喘鳴、呼吸困難などで、
発作性で反復することが特徴的な慢性疾患です。

 

・発作の強度は、症状が軽度の「小発作」、
中等度の「中発作」、高度の「大発作」、
エマージェンシー対応が必要な「重篤」に分類されます。

 

・気管支喘息は、深夜から早朝にかけて、
発作が出現しやすい時間帯があります。

 

・気管支喘息の症状は、発作時のみに出現しますが、
その発作は、労作時だけでなく、安静時にも出現します。

 

・発作の引き金になるものは、
ハウスダスト、ダニ、花粉、食物等の環境アレルゲン、
タバコや気温、気圧の変化、疲労、ストレスなどが挙げられます。

 

・気管支喘息は、小児に発症することが多いアトピー型と、
成人に多い非アトピー型に分類されます。

 

・小児に多いアトピー型の気管支喘息は、春と秋に増悪します。

 

・成人に多い非アトピー型の気管支喘息は、冬の増悪が多くなります。

 

 

気管支喘息の入院時の対応

 

気管支喘息は、軽度の発作から、重篤の発作まで、
さまざまな強度が見られます。

 

気管支喘息では、緊急度の判別が必要なため、
患者さんやご家族からの聴取を迅速に行うことが大切です。

 

患者さんが会話ができるようであれば、症状が出現した時間帯、
増悪の原因、今までの治療や診断、入院歴、心肺疾患や合併症の有無、
喘息以外のアレルギーの有無、家族歴などについて
迅速に聴取します。

 

特に、外科手術を予定している場合などは、
喘息の重症度が麻酔法の決定に大きく影響するため、
既往の確認を忘れずに行うことが必要です。

 

また、住環境としては、ペット飼育の有無を聞くことが大切です。

 

治療や管理の遅れは、喘息の重篤化、慢性化を招く可能性があります。
ですから、発生因子につながる情報収集は必要です。

 

患者さん本人が呼吸苦などで話ができない場合は、
家族などに確認をとることが必要です。

 

医師には、必要な検査、薬剤投与、酸素投与の有無などについて
確認しておきましょう。

 

治療につなげる準備

 

喘息の発作では、緊急度の判別がとても重要です。

 

まず、血液検査、動脈血液ガス分析検査などの
臨床検査から病態を評価します。

 

また、アトピー素因の存在を知るためのIgE検査を起こない、
特異的IgE抗体の有無を評価することが必要です。

 

症状が安定してきたら、スパイロメトリー(気道可逆性試験)や
ピークフロー(PEF)測定による呼吸機能検査が実施されます。
準備をしておきましょう。

 

また、COPDや心疾患などの気質的心肺疾患を除外することが必要なため、
胸部X線、CT等による鑑別診断を行います。

 

次に、薬物治療の開始に備え、点滴ルートを確保します。

 

投薬によっても症状が改善しないとき、
重篤発作の時には、酸素投与や気管内挿管による
人工呼吸管理が行われることを念頭に置き、行動することが必要です。

 

気管内挿管が必要になる場合とは

 

・高度の換気障害、心臓停止、呼吸停止が見られる場合
・明らかな呼吸筋疲弊が見られる場合
・酸素を最大投与してもPaO2が50mmHg未満の場合
・PaCO2が、1時間5mmHg以上上昇する場合
・急激なPaCO2の上昇と意識障害を伴う場合

 

治療と介助

 

急性増悪時での治療の基本は薬物療法になります。

 

気管支拡張薬を使い、狭窄・閉塞している気道を広げて、
ステロイド薬で炎症を抑えることにより
炎症の改善を図ります。

 

まず、症状から発作強度を評価し、
その評価に応じて治療を開始します。」

 

発作治療約の第一選択薬は、β2刺激薬です。

 

必要に応じて、テオフィリン、アドレナリン、ステロイド薬(副腎皮質ステロイド)、
抗コリン薬などが、
吸入或いは注射・点滴によって投与されます。

 

呼吸困難が強い場合は、投薬だけでなく、
酸素投与を行います。

 

重篤な発作症状では、気管内挿管と人工呼吸器の装着が必要になります。

 

症状が改善されるまで治療を継続し、
発作がおさまって症状が安定してきたら、酸素投与は中止し、
抜管して人工呼吸管理を終了します。

 

その後、自己管理のための教育指導を行っていきます。

 

発作が起きているときは、患者さんが呼吸しやすいように
安楽な体位を保持することも大切です。

 

酸素投与が必要なときにマスクの装着が難しいときには、
無理をしないように口元に酸素を流します。

 

少し落ち着いたら体制を整え、
マスクを装着しなおしましょう。

 

気管支喘息の発作が起きている患者さんは、
換気不全のため、肺にCO2がたまっている状態です。

 

ですから、酸素を吸うことが難しいです。

 

口すぼめ呼吸などによって、CO2を吐き出すことを意識できるよう
看護師が援助していきましょう。

 

喘息発作(急性増悪)の強度に対応した管理法

 

☆発作強度: 喘鳴/胸苦しい
・呼吸困難: 急ぐと苦しい、動くと苦しい
・動作: ほぼ普通
・検査値: PEF(80%以上)、SpO2(96%以上)、PaO2(正常)、PaCO2(45mmHg未満)
・治療: β2刺激薬吸入、頓用、デオフィリン薬頓用
・治療の場: 自宅治療

 

☆発作強度: 軽度(小発作)
・呼吸困難: 苦しいが横になれる
・動作: やや困難
・検査値: PEF(80%以上)、SpO2(96%以上)、PaO2(正常)、PaCO2(45mmHg未満)
・治療: β2刺激薬吸入、頓用、デオフィリン薬頓用
・治療の場: 自宅治療

 

☆発作強度: 中等度(中発作)
・呼吸困難: 苦しくて横になれない
・動作: かなり困難、かろうじて歩くことができる
・検査値: PEF(60〜80%)、SpO2(91〜95%)、PaO2(60mmHg超)、PaCO2(45mmHg未満)
・治療: β2刺激薬ネブライザー吸入反復、ボスミン(0.1%アドレナリン)皮下注、
    アミノフィリン点滴静注、ステロイド薬点滴静注、酸素、抗コリン薬吸入考慮
・治療の場: 救急外来
      1時間で症状が改善すれば帰宅、
       入院治療→高度喘息症状治療へ
      2〜4時間で反応不十分
      1〜2時間で反応ナシ

 

☆発作強度: 高度(大発作)
・呼吸困難: 苦しくて動くことができない
・動作: 歩行不能、会話困難
・検査値: PEF(60%未満)、SpO2(90%以下)、PaO2(60mmHg以下)、PaCO2(45mmHg以上)
・治療: ボスミン(0.1%アドレナリン)皮下注、アミノフィリン持続点滴、
    ステロイド薬点滴静注反復、酸素、β2刺激薬ネブライザー吸入反復
・治療の場: 救急外来(1時間以内に反応なければ入院治療、
      悪化した場合は重篤症状の治療へ)

 

☆発作強度: 重篤
・呼吸困難: 呼吸減弱、チアノーゼ、呼吸停止
・動作: 会話不能、体動不能、錯乱、意識障害、失禁
・検査値: PEF(測定不能)、SpO2(90%以下)、PaO2(60mmHg以下)、PaCO2(45mmHg以上)
・治療: ボスミン(0.1%アドレナリン)皮下注、アミノフィリン持続点滴、
    ステロイド薬点滴静注反復、酸素、β2刺激薬ネブライザー吸入反復で治療を継続、
    症状、呼吸機能悪化で挿管、酸素吸入にも関わらずPaO250mmHg以下および、
    意識障害を伴うPaCO2の上昇、人工呼吸、気管支洗浄、イソフルラン・セボフルラン・
    エンフルラン等による全身麻酔を考慮
・治療の場: 直ちに入院、ICU管理

 

☆喘息発作(急性増悪)の強度に対応した管理法の補足

 

*検査値: 気管支拡張薬投与後の値を参考にします。

 

*発作強度: 発作強度は、主に呼吸困難の程度で判定し、 
      他の項目は参考事項とします。
       異なった発作強度の症状が混在するときは、
      発作強度の重い方で判断します。

 

*ICU管理: ICUまたは気管内挿管、捕助呼吸、気管支洗浄などの処置ができ、
      血圧、心電図、パルスオキシメーターによる継続的モニターが可能な
      病室の管理です。
       重症呼吸不全時の挿管、人工呼吸装置の装着は、
      時に危険な処置のため、緊急処置としてやむをえない場合以外は、
      複数の経験ある専門医によって行われることが望ましいです。

 

*頓用: β2刺激薬pMDI 1〜2パフ、20分おき2回反復可能。
     無効或いは増悪傾向時は、β2刺激薬1錠、
    コリンテオフィリンまたはアミノフィリン200mgを頓用します。

 

*β2刺激薬ネブライザー吸入反復: 20〜30分おきに反復します。
                 脈拍を130/分以下に保つようにモニターします。

 

*ボスミン(0.1%アドレナリン)皮下注: 0.1〜0.3mL皮下注射20〜30分間隔で反復可。
                    脈拍は130/分以下に保つようにモニターします。
                    虚血性心疾患、緑内障(解放隅角(単性)緑内障は可能)、
                   甲状腺機能亢進症では禁忌、
                   高血圧の存在下では血圧、心電図モニターが必要です。

 

 

*アミノフィリン点滴静注: アミノフィリン6mg/kgと等張補液薬200〜250mLを点滴静注、
             1/2量を15分間程度、残量を45分間程度で投与し、
             中毒症状(頭痛、吐き気、動悸、期外収縮など)が出現したら注視します。
             発作前U、テオフィリン薬が十分に投与されている場合は、
             アミノフィリンを半量もしくはそれ以下に減量します。
             通常、テオフィリン服用患者さんの場合は、可能な限り血中濃度を測定します。

 

*ステロイド薬点滴静注: ヒドロコルチゾン200〜500mg、メチルプレドニゾロン40〜125mg、
            デキサメタゾン、或いはベタメタゾン4〜8mgを点滴静注。
             以降ヒドロコルチゾン100〜200mgまたはメチルプレドニゾン40〜80mgを
            必要に応じて4〜6時間ごとに、或いはデキサメタゾン或いはベタメタゾン4〜8mgを
            必要に応じて6時間ごとに点滴静注、またはプレドニゾロン0.5mg/kg/日、経口で投与します。

 

*酸素: 酸素吸入は、鼻かニューれなどで、1〜2L/分、PaO280mmHg前後を目標とします。

 

*アミノフィリン持続点滴: 第1回のアミノフィリン点滴静注に続き、持続点滴をする場合は、
             アミノフィリン250mg(1筒)を5〜7時間(およそ0.6〜0.8mg/kg時)で点滴し、
             血中テオフィリン濃度が10〜20μg/mL(ただし最大限の薬効を得るには15〜20μg/mL)になるよう
             血中濃度をモニターし、中毒症状の出現で中止します。

 

☆日本アレルギー学会、喘息ガイドライン専門部会の監修より引用しています。

 

気管支喘息の治療時の対応

 

気管支喘息の治療をし、症状の改善が見られない場合や
悪化している場合には更なる治療が必要になります。

 

SpO2、呼吸回数、脈拍、呼吸筋の動き、顔面蒼白、チアノーゼの有無などを
観察し、呼吸状態を把握することが大切です。

 

酸素投与を行っている場合は、SpO2が95%以上であることを確認します。

 

投薬されている薬剤によっては、頭痛や悪心、嘔吐、頻脈、不整脈などの
副作用が見られることがあります。

 

これらの副作用の症状についても、十分注意をして行く必要があります。

 

 

呼吸状態を見るためには、PEF、SpO2、PaO2、PaCO2の値を見ていきます。

 

PEFについては患者さんの自己最良値を基準とし、
80%以下、SpO2は95%以下、PaO2は80mmHg以下、PaCO2は45mmHg以上の場合、
呼吸状態が不良と考えます。

 

また、呼吸回数や呼吸の深さ、呼吸時の胸郭の動き、
姿勢などからも呼吸状態をアセスメントします。

 

血液検査では、気道炎症の指標となる好酸球に注目します。

 

この値が上昇していれば、炎症が生じていると推察できます。

 

また、血清検査や皮内テストで、
特異的IgE抗体濃霧を確認します。

 

IgE抗体が検出された場合は、
ハウスダストやダニ等の環境アレルゲンが
発作に関与していることが確認できます。

 

COPDを合併している患者さんには、酸素投与時の酸素量や、
呼吸評価でのSpO2、PaO2、PaCO2値に注目します。

 

酸素の投与量が多ければ、CO2ナルコーシスになる場合があります。

 

呼吸回数、呼吸状態、意識レベルの観察を十分に行うようにします。

 

特に高齢者では、COPDのほか、心疾患や肺がん、
結核、逆流性食道炎などの合併症も多く、
起座位での体位保持や喀痰の有無、胸部X腺、
超音波検査等からの鑑別が重要です。

 

気管支喘息の看護ケア

 

気管支喘息で最も大切なのは、自己管理です。

 

発作が起きたときに、どのように対処すべきか、
その理由や対処方法を、患者さんに理解してもらい、
実行してもらうことが必要です。

 

喘息には誘因があるため、
起こりやすい時間帯やアレルゲンなどについて患者さんに説明します。

 

たとえば、乾燥で粘膜が刺激されるのを防ぐため、
加湿器を使用するなど、具体的に説明をすることが必要です。

 

急性期を脱したら、どのような症状のときに受診すべきかなど、
急性増悪への対応も患者さんに伝えます。

 

患者さんのADLや生活環境に配慮しながら、
喘息日記の必要性、PEF値のモニタリング、吸入療法など、
自己管理能力の向上を目指した支援が大切です。

 

気道閉塞のために必要な呼吸量が不足したときは、
腹筋や呼吸筋以外の筋を使い、不足量を補おうとする
呼吸努力が見られます。

 

肩を上下させる肩呼吸、鼻翼を開く鼻翼呼吸、
口すぼめ呼吸などが見られたら、
呼吸状態を観察しなければなりません。

 

呼吸器疾患の憎悪や発作時には、
特徴的な呼吸音と呼吸様式が見られます。

 

以上呼吸音には、減弱、消失、呼吸延長、
喘息様などの呼吸音の異常と副雑音があります。

 

副雑音では、空気が気管や気管支の閉塞、
或いは狭小部を通るときに発する「連続性副雑音」、
分泌物が貯留している抹消気管支などを通るときに発する
「継続性副雑音」に注意をすることが必要です。

 

また、重篤な喘息発作の場合は、
高度の換気障害、または心臓停止、呼吸停止に至ることがあります。

 

呼吸困難や頻呼吸、過呼吸がみられたときは、
換気不全による過換気の可能性があります。

 

バイタルサイン、呼吸状態、意識レベルなども確認し、
異常が見られたときは早急に医師に報告しましょう。