看護師が知っておきたい冬の病気

冬に多発する疾患・インフルエンザ

インフルエンザのケアの流れ

 

発症(来院)
  ↓
臨床症状の観察(発熱38度以上、悪寒、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感)
  ↓
推定診断・薬剤準備
  ↓
検査準備
  ↓
検査(確定診断)
  ↓
治療(薬物療法)
  ↓
隔離準備
  ↓
外来患者:住宅療法 
入院患者:感染予防対策(隔離)

  ↓
入院患者:看護ケア
(患者さん間の感染予防、医療者の感染予防、外部からの感染予防)
(脱水症状の有無、合併症の徴候、他の患者さんの感染徴候の確認)
  ↓
隔離解除(隔離期間は5日程度)

 

 

インフルエンザの特徴的な症状を見極め、
48時間以内に薬物療法を開始することが必要です。

 

確実な感染予防対策を実施するために、
感染の拡大を早期に防ぐことが必要です。

 

インフルエンザの特徴

 

・インフルエンザは、インフルエンザウィルスによって引きおこされる
急性呼吸器感染症で、一般のかぜ症候群とは分けられます。

 

・インフルエンザは、日本では、
冬から春先(1月ごろから3月ごろ)にかけて流行します。

 

・季節性インフルエンザとして流行するのは、
A/ソ連型(H1N1)とA/香港型(H3N2)が代表的です。

 

・感染経路は主に飛沫感染です。

 

・感染経路では、痰や鼻汁が付着した手指を介する接触感染の場合もあります。

 

・ウイルスは、口や鼻から下気道に入って定着し、
上気道に到達して増殖します。

 

・通常の潜伏期間は、感染から1〜3日、症状は1週間ほどで軽快します。

 

・インフルエンザの主な症状は、突然の高熱(38℃以上、まれに37℃台)、
悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感などがあります。

 

・インフルエンザの合併症は、小児では、インフルエンザ脳症、
高齢者では肺炎などがあり、重篤化すると死に至ることもあります。

 

インフルエンザの診断と治療

 

インフルエンザは、抗原迅速診断キットを用いて確定診断をします。

 

抗原迅速診断キットは、
鼻腔や咽頭の拭い液などを検体として採取し、
ウイルスを直接検出して測定する検査で、
15分ほどで結果が出ます。

 

ただし、感染直後でウイルス量が少ないと
陰性を示すことがあります。

 

ですから、入院中の患者さんなど、
インフルエンザの典型的な症状がある場合は、
必要に応じて6〜12時間後に再検査を検討し、
確定診断を考慮することもできます。

 

インフルエンザの治療は、抗インフルエンザ薬を
発症後48時間以内に投与することが必要です。

 

症状の軽減、急性期症状の期間の短縮を期待することができます。

 

インフルエンザの典型的な臨床症状は、
38℃以上の高熱が突然出ること、
悪寒、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などがあります。

 

インフルエンザは、普通の風邪とは異なり、
全身症状が先に現れます。

 

その後、鼻水やくしゃみ、咽頭痛などの上気道症状が現れます。

 

典型的症状の有無を観察し、
インフルエンザであると判断された場合は、
検査結果が陰性であっても隔離を行います。

 

また、高熱によって発汗し、
脱水症状がないかどうかも観察します。

 

また、同室の患者さんに同じような症状がみられないかも
継続して観察することが必要です。

 

 

インフルエンザの治療薬

 

抗インフルエンザ薬には、ウイルスを感染細胞から
ほかに伝播させる酵素であるノイラミニダーゼに対する阻害薬
(タミフル、リレンザ)や、M2蛋白と結合して
ウイルスの増殖を阻害するシンメトレルなどがあります。

 

一般的に用いられているのはタミフルですが、
リレンザも10歳代の青少年等を中心に使用されています。

 

☆一般名:オセルタミビルリン酸塩/商品名:タミフル
 投与方法:経口/有効性:A型B型に有効

 

☆一般名:ザナミビル/商品名:リレンザ
 投与方法:経口/有効性:A型B型に有効

 

☆一般名:ペラミビル/商品名:ラピアクタ
 投与方法:静注射/有効性:A型B型に有効

 

☆一般名:アマンタジン塩酸塩/商品名:シンメトレル
 投与方法:経口/有効性:A型にのみ有効

 

 

インフルエンザの型

 

インフルエンザウイルスは、
RNAウイルスのオルソミクソウイルス科に属します。

 

そして、ウイルス内部蛋白の高原性の違いにより、
A型、B型、C型に分類されます。

 

このうち人に感染し、流行するのはA型とB型です。

 

RNAウイルスは突然変異を起こすことが多くあります。

 

この突然変異、つまり不連続抗原変異(フルモデルチェンジ)が起こると、
新型インフルエンザが発生します。

 

季節性インフルエンザは、シーズンごとに流行する型が変わります。

 

ワクチンは、WHOが流行予測によって3種を選択するため、
どの型が流行すると思われるのかを知ることができます。

 

看護師は、ウイルスに対する知識、シーズンごとの特徴、動き、
さらに新型インフルエンザについての情報を収集し、
早めの対策を考えておくことが必要です。

 

インフルエンザ患者さんの観察

 

インフルエンザの抗原迅速検査が陰性の場合、
或いは確定診断が行われていない場合は、
隔離後でも、抗原迅速検査を検討することが必要です。

 

また、合併症の症状の有無にも
注意をするようにしましょう。

 

特に、高齢の患者さんの場合は、
基礎疾患を有することも多いです。

 

そのため、身体機能や免疫力が低下していて、
肺炎を容易に合併してしまうなどということが少なくありません。

 

インフルエンザ肺炎の症状である咳嗽や膿性痰などを確認した場合は、
混合性肺炎を疑い、肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などの検査を行います。

 

5歳以下の乳幼児の場合は、インフルエンザ脳症を合併することがあります。

 

異常言動などの意識障害が見られないかどうか、
痙攣を起こしていないかなどの観察を行うことが必要です。

 

また、呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患がある患者さん、
糖尿病などの代謝疾患を有する患者さんも、
インフルエンザが重症化しやすく、
死にいたることがありますから、注意して観察することが必要です。

 

インフルエンザの感染予防対策

 

インフルエンザウイルスは感染力がとても強いです。

 

ですから、感染予防策を講じることが急務です。

 

特に入院患者さんがインフルエンザを発症した場合は、
院内に蔓延させないようにすることが重要です。

 

外来

インフルエンザは飛沫感染、場合によっては接触感染します。

 

ですから、外来では、待合室などで他の患者さんとの接触を
避けるように配慮します。

 

なるべく座る場所を離したり、
空いている部屋で待っていてもらうなどの工夫も必要です。

 

患者さん自身には、「咳エチケット」を実践してもらうように
指導しましょう。

 

 *咳エチケット(呼吸器衛生)*

 

 @ 咳やくしゃみをするときは、周囲の人からなるべく離れる。
 A 咳やくしゃみをするときは、他の人から顔をそらせ、
  ティッシュなどで口と鼻を覆う。
 B 咳やくしゃみを抑えた手を洗う。
 C マスクを着用する。

 

また、医療者が対応する際のマスク着用も必須です。

病棟

病棟内で、一人でもインフルエンザが疑われる患者さんがいる場合は、
徹底した感染対策が必要です。

 

病棟での感染予防対策には、
「患者さん間での感染予防」、
「医療者の保護と媒介を防ぐ感染予防」、
「院外からウイルスを侵入させないための感染予防」があります。

 

@患者さん間での感染予防

 

インフルエンザの疑いのある患者さんを個室に移します。

 

個室がない場合や、複数の患者さんがいる場合は、
病室を限定した集団隔離(コホーディング)を行います。

 

無理な場合は、ベッドの間隔を1m以上に保ったり、
カーテンで隔離をするなどします。

 

検査などで移動が必要な場合は、
患者さんにマスクをしてもらいます。

 

また、同室の患者さんには、患者さんの同意を得た上で、
タミフルを予防投与します。
この際のタミフルやリレンザの予防投薬は、
保険適用外となります。

 

隔離の解除は、学校保健安全法の基本に基づき行います。

 

 *学校保健安全法*

 

  学校保健安全法は、2012年4月に改訂されています。

 

  インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び
 新型インフルエンザ等感染症はのぞく)を含む9つの
 第2種感染症について、出席停止の基準が定められています。

 

  インフルエンザについては、基本的に「発症した後
 5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を
 経過するまで」とされています。

 

  医療者が万が一感染した場合も、
 この学校保健安全法に基づき出勤停止とします。

 

A医療者の保護と媒介を防ぐ感染予防

 

インフルエンザ流行期には、スタッフはサージカルマスクを着用し、
標準予防策に従い、必要に応じて手袋を着用し、
手指衛生を徹底することが大切です。

 

マスクは、その都度取り替える必要はありません。

 

ですが、汚染時や休憩ではずしたときには交換するようにします。

 

マスクの着用中は、顎にかけない、マスクの表面に触れないなど、
正しい使用法を実施し、徹底するようにします。

 

流行期には、医療者だけでなく、
全職員がサージカルマスクを着用するようにします。

 

また、流行の前には、医療者は、インフルエンザワクチンの
予防接種を済ませておくことも必要です。

 

毎年10月から11月にかけて、
全職員に対するワクチン接種を無料で実施する施設も増えています。

 

インフルエンザ患者さんが発生した病棟では、
スタッフに対しても、
ワクチンを接種していない場合は、タミフルの予防投与を検討します。

 

スタッフが罹患したときも、
学校保健安全法にならい、出勤停止とします。

 

B院外からウイルスを侵入させないための感染予防

 

インフルエンザの流行期には、「咳エチケット」に従い、
鼻水や咳、くしゃみ等の呼吸器症状のある人には、
必ずマスクを装着し、病室に入る際は手指衛生を行うように指導します。

 

更に、院内にポスターを掲示する等して、
予防対策への啓発を行います。

 

病院内の清掃については、消毒は不要です。

 

通常の清掃で十分です。

 

しかし、インフルエンザは接触感染する可能性もあるため、
手がよく触れるベッド柵やテーブル、
ドアノブ等はアルコールで拭き取ります。

 

インフルエンザ患者さんが退院したときは、
アルコールで清掃します。

 

標準予防策(スタンダードプリコーション)

 

「標準予防策(スタンダードプリコーション)は、
すべての血液、体液、汗を除く分泌物、排泄物、粘膜、
損傷のある皮膚は、伝播しうる病原体を含む可能性がある」
という考えに基づき、患者さんと医療者、
患者さん同士の病原体の伝播を防ぐため、
感染の有無に関わらず適用する基本的な対策のことをいいます。

 

2007年の改訂により、「咳エチケット」の項目が
追加されています。

 

*標準予防策の具体策*

 

・手指衛生
・個人防護具
・血液媒体病原体曝露防止
・患者配置・患者の移動
・環境措置
・ケア器具及び機器の取扱い
・リネンの洗濯
・患者の蘇生
・呼吸器衛生/咳エチケット
・安全な注射処置
・特別な腰椎穿刺処置での感染制御手技