看護師が知っておきたい冬の病気

冬に多発する疾患・ノロウイルス性胃腸炎

ノロウイルス性胃腸炎のケアの流れ

 

発症(来院)
  ↓
臨床症状の観察(激しい嘔吐、水溶性の下痢、腹痛、風邪様症状)
  ↓
検査準備・推定診断・確定診断
  ↓
入院患者は隔離準備・外来患者は在宅療養
  ↓
入院患者は感染予防対策(隔離)(患者さん間の感染予防、医療者の感染予防)
  ↓
薬剤準備
  ↓
対処療法
  ↓
経過観察(脱水症状の確認、窒息への準備、汚物の処理、環境衛生の保持)
  ↓

隔離解除(隔離期間:5日間程度)

 

 

ノロウイルス性胃腸炎は、
強力な感染力を持つウイルスの伝播を防ぐため、
徹底的な感染予防が必要です。

 

激しい嘔吐や下痢によって脱水が予測されるため、
脱水症状を見逃さないことが大切です。

 

 

ノロウイルス性胃腸炎の特徴

 

・ノロウイルス性胃腸炎は、ノロウイルスが病原体となる
急性胃腸炎で、強い感染力を示すものです。

 

・感染経路は、経口感染及び接触感染で、
まれに空気感染もあります。

 

・主な原因は、カキや他の2枚などノロウイルスに汚染された食べ物を
生、或いは加熱不十分な状態で食べたり、
汚染された食べ物を調理した器具を介して感染します。

 

・感染の原因には、感染患者さんの嘔吐物や糞便から
直接感染するヒト〜ヒト感染の場合も少ないです。

 

・ノロウイルス性胃腸炎の主な症状は、
激しい嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状です。

 

・ノロウイルス感染症の潜伏期間は、
12〜48時間で、発症後、2〜3日目で快方に向かいます。
5日間ほどで症状も治まります。
ただし、症状が消失してからもウイルスは3〜7日間便中に排泄されます。

 

ノロウイルス性胃腸炎の診断

 

ノロウイルスによる感染は、
ノロウイルス抗原検査キットで、
吐瀉物や糞便を検査すること特定できます。

 

65歳以上の高齢者や3歳未満の乳幼児、
或いは何らかの疾患を有する人など、
医師が必要と認めた場合には、
ノロウイルス抗原検査キットは保険が適用になります。

 

ノロウイルス抗原検査キットでの検査は、
ノロウイルスに感染しているにもかかわらず、
陰性となる場合もあるので、
臨床症状とあわせて総合的に判断する必要があります。

 

激しい嘔吐や下痢などの消化器症状があれば、
ノロウイルスを疑い、
検査結果を待たずに早急に感染対策を行うのが良いでしょう。

 

 

ノロウイルス性胃腸炎の治療

 

ノロウイルス性胃腸炎は、激しい嘔吐を引き起こすことが特徴です。

 

制吐薬が効かないほど、時に床や壁に飛び散るほどの症状が現れます。

 

また、水溶性の下痢が多いときには、
1日に10回以上起こります。

 

頭痛や発熱、咽頭痛などの風邪様症状が見られることもあります。

 

ノロウイルスに対する有効な抗ウイルス薬はありません。

 

治療は、脱水症状の予防など、対処療法が中心になります。

 

経口的な引水が無理な場合や、
脱水症状が顕著である場合は補液を行います。

 

また、症状によっては制吐薬や整腸薬を用いることもあります。

 

止痢薬は、ウイルスの排菌を阻害し、
体内にとどめることになるという意見もあり、
使用しないことが多いです。

 

基礎疾患のない成人の場合は、特に治療をしなくても、
4〜5日ほどで回復します。

 

ノロウイルス性胃腸炎の観察

 

嘔吐や下痢の症状が強く、続くことが多いため、
ノロウイルス性胃腸炎になると、急速に脱水に至ることがあります。

 

皮膚の状態や水分バランスなど、
脱水症状の有無をしっかり観察しましょう。

 

免疫力の低い乳幼児や高齢者には、
特に注意をすることが必要です。

 

また、横になったまま嘔吐する患者さんも多いです。

 

その場合、吐瀉物がのどに詰まって窒息してしまうこともあります。

 

そのようなことがないように、
こまめにしっかり観察するようにしましょう。

 

ノロウイルス性胃腸炎の感染予防対策

 

ノロウイルス性胃腸炎の感染力はとても強いです。

 

わずか10〜100個のウイルスでも感染します。

 

院内で一人でも患者さんが発症すると、
病棟を閉鎖しなければ感染が断ち切れないといわれるほどです。

 

冬場の流行期は、病院にとっては頭の痛い季節となります。

 

そのため、ノロウイルス性胃腸炎では、
消化器症状への対処とともに、何よりも感染予防対策が重要です。

 

ノロウイルス感染が疑われる消化器症状が見られる患者さんは、
検査結果を待たずに、すぐに個室に移します。

 

そして、臨床症状が治まるまで、
通常2〜3日、個室隔離とします。

 

院内での感染経路には、患者さんの吐瀉物、
糞便からの接触・経口感染、吐瀉物がエアゾル化して
舞い上がることによる空気感染があります。

 

そのため、これに応じた感染予防策をとります。

 

「感染させないため」、また、「感染しないため」には、
以下のようなポイントが重要です。

 

@ 看護師は個人防護具の着用を徹底します。

 

ケアを行う際は、ガウンやビニールエプロン、使い捨て手袋、
サージカルマスクを着用します。

 

吸引などを行う場合には、ゴーグルの着用が必要になることもあります。

 

空気感染することもあるということが確認されていますから、
可能であれば、マスクはN95を使用すると良いでしょう。

 

また、使用した防護具はすべてその場で脱ぎ、
感染性廃棄物として処理することが必要です。

 

A 吐瀉物や糞便の扱い方

 

吐瀉物や糞便は、的確に扱うことが必要です。

 

吐瀉物や糞便などの汚物は、直ちにビニール袋に入れて密封し、
すぐに感染性廃棄物として処理します。

 

短時間でも病室内や廊下等に放置することがないように注意します。

 

使用後のオムツについても、同じように処理します。

 

シーツなどのリネン類も感染物として、同じように処理します。

 

床や壁についた吐瀉物は、次亜塩素酸ナトリウム溶液で十分に拭き取り、
その後、水拭きします。

 

拭き取った布やペーパータオルも、感染性廃棄物として処理します。

 

この場合、注意が必要なのは、
アルコール消毒では効果がないということです。

 

*消毒物に応じた次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度

 

 環境消毒: 0.02〜1%
 器具消毒: 0.1%
 トイレ消毒: 0.1%
 吐瀉物・糞便処理: 0.1〜0.5%

 

*防護具の正しい着脱法

 

防護具を着用するときには、手指衛生のあと、
「ガウンまたはエプロン→マスク→手袋」の順につけるようにします。

 

ゴーグルが必要な場合は、マスクの後につけます。

 

直接患者さんに触れる手袋は最後につけ、
衛生を保ちます。

 

汚染した防護具を外すときには、
汚染された部位に触れないように注意しながら、
装着時とは逆に「手袋→マスク→ガウンまたはエプロン」の順に外します。

 

いずれも表面を内側に織り込むようにしてまとめ、
ビニール袋に入れて密封することが必要です。

 

B トイレの共用を避ける

 

糞便からの感染を考えると、
感染患者さんのトイレは、専用のトイレ、
またはポータブルトイレを用いることが望ましいといえます。

 

それが無理な場合は、使用後、次亜塩素酸ナトリウム溶液で
便座やドアノブなど、
患者さんが触れた部分を拭き、さらに水拭きします。

 

他の患者さんが使用する前に、
毎回清掃を行ったほうが伝播防止につながります。

 

C 手指衛生を徹底する

 

ノロウイルスの場合は、速乾性擦式アルコール製剤による
手指消毒は効果がありません。

 

ノロウイルス性胃腸炎の看護の際、
手指衛生を保つためには、石鹸と流水による
手洗いが最も効果的な方法です。

 

ノロウイルス性胃腸炎の患者さんの処置や観察のために訪室した際は、
手袋を外してから流水による手洗いを実施します。

 

そして、手袋をしていても、手指衛生は必ず行わなければなりません。

 

手袋のピンホールがある可能性もあります。

 

手袋をしているからといって、100%感染がないとは言い切ることができません。

 

また、手袋を外す際に汚染することも考えられます。

 

D感染したら勤務しないことが感染予防になる

 

ノロウイルス性胃腸炎の患者さんが病棟で発生した場合、
最も感染しやすいのは、看護師などの病棟スタッフです。

 

しかも、多くのスタッフが感染してしまうと、
病棟が機能できなくなります。

 

軽い下痢等であっても、ノロウイルス性胃腸炎が疑われる場合は、
無理をしないで仕事を休み、自宅で安静にすることは、
感染予防対策としてとても重要です。

 

ノロウイルス性胃腸炎以外の主な感染性胃腸炎

 

臨床の現場では、ノロウイルス性胃腸炎と同じような症状の
胃腸炎の患者さんに出会うことが少なくありません。

 

ノロウイルス性胃腸炎以外の主な感染性胃腸炎の特徴を覚えておき、
鑑別の際に役立てましょう。

 

・ロタウイルス性胃腸炎

 

 感染経路は、経口感染・接触感染(まれに空気感染)です。

 

 主症状は、下痢(米のとぎ汁のような白い下痢便)、嘔吐、重度の脱水症などがあります。

 

 好発対象は、0歳〜1歳児が多いです。

 

 迅速診断検査(イムノクロマト法)で検査します。
 *15分ほどで結果がでます。

 

 次亜塩素酸ナトリウム消毒、流水・石鹸による衛生学的手洗いで感染予防します。

 

 ロタウイルス性胃腸炎には、ワクチンがあります。

 

・擬膜性大腸炎(クロストリジウム・ディフィシル)

 

 擬膜性大腸炎(クロストリジウム・ディフィシル)の感染経路は、接触感染です。

 

 主症状は、激しい下痢、腹痛、発熱です。

 

 好発対象は、中高年(高齢者や基礎疾患を持つ患者さんの場合は重篤化することがあります)です。

 

 次亜塩素酸ナトリウム、グルタラール製剤消毒、流水・石鹸による衛生学的手洗いで感染予防します。

 

 抗菌薬の使用制限により、予防効果が見られます。